奥多摩三大急登3つめ! 三頭山 ヌカザス尾根~オツネの泣き坂

 今月は休みのたびに天気が悪く、毎年恒例の大楠山の菜の花畑も時機を逸してしまった。
もうちょっと早い時期に晴れていれば大楠山の頂上直下までMTBで自走することも考えたのだが、タイミングがずれるとやる気が起きない。 奥多摩ロープウェーの廃墟探検の下見のために奥多摩湖まで行くことも考えたのだが、そろそろきっちり山を歩きたいこともあったので、GPSの足跡をとっていない三頭山に行くことにした。

 三頭山は4年前に登っているのだけれど、その時は一番楽な都民の森からのコース、しかも1時のバスに間に合うよう滝を見て速攻で降りてきてしまったのであまり大変だった印象はない。しかし今回はヤマケイが選ぶ日本の名急登ベスト100入りを果たし、諸説ある奥多摩三大急登の候補のひとつであるヌカザス尾根からオツネの泣き坂を登るといういっちゃんハードなルートをとることにした。


 ところで以前にも書いたが、奥多摩三大急登で必ず入るのは鷹ノ巣山の稲村岩尾根だけで、残りの二つは人によって違う。だが、諸説ある三大急登候補に

1.一つの山につき一つとする
2.それなりに登ってる人が多く、多くの人がキツさを認める
3.昔からある道である

という俺ルールを適用した場合、浅間尾根は昔山岳信仰の人が登った道であり歴史的には申し分ないのであるが、鷹ノ巣山で稲村岩尾根があるので除外、野陣尾根は「富田新道」の名もあるように鎌仙人が作った比較的新しい道だし踏み跡が不明瞭になるくらい登山者が少ないので失格、あとは六ツ石山の榛ノ木尾根だが、六ツ石山は鷹ノ巣山へ登る石尾根上の小ピークぐらいの印象なので格的にちょっと物足りない。 そこへ行くと三頭山は奥多摩三山の一つだし、滝はあるわ避難小屋はあるわ売店やレストハウスもあるわで申し分ない。 そしてヌカザス尾根は途中でムロクボ尾根と合流するのだが、ここはその昔、オツネさんが通ったという言い伝えもあり、歴史的にも申し分ない。

 そんなわけで俺的には奥多摩三大急登は

1.誰もが認める最凶激坂、稲村岩尾根
2.短いけど斜度はえげつない大休場尾根
3.歴史の道、ヌカザス尾根

ということに決定した。

 ところでオツネさんオツネさんと何度も名前が出ているが、これはどういう話なのかというと

その昔、いまの奥多摩町川野地区(奥多摩湖近く)杉田重長の川野
城にオツネという美女が働いていたという。

ある時、村の寺浄光院に美男僧がやって来ました。オツネはその僧
・香蘭といつか深い仲に。毎晩忍び逢いが続きます。修行のジャマ
になることを心配した住職は、香蘭を山梨県上野原町西原の寛珠院
というお寺に移しました。

しかしオツネは香蘭が忘れられず、ある夜西原に訪ねて行きました。
香蘭との短い時間の逢う瀬を終え、急いで帰りますが三頭山を過ぎ
たあたりの坂に差しかかると東の空が明けてきます。

お屋敷の旦那さまに知られたらどんなお叱りを受けるか分かりませ
ん。「ああ、夜が明けてしまう。どうしよう」。オツネは泣きながら
坂を駆け下ります。村人はオツネに同情し哀れみました。

こうしてついた地名がオツネの泣き坂。「遠く、遠くながれる明け
の鐘しのび通いのはかなさに、祈る峠の地蔵さま、香蘭、香蘭、月
を呼ぶよなツネなき峠…」。奥多摩地方に伝わる歌「ツネなき峠」
の一節です。

山のはなし「奥多摩三頭山・オツネの泣き坂」 (山のふみあと日記)

 

なんだそうな。 そのまま引用したが、上野原市西原に臨済宗建長寺派の宝珠寺というのがあるので、旧字体の「寶」珠院の間違いではないかなと思う。
 
 川野というのはだいたい深山橋バス停の手前のトンネルあたりなので、ダムになる前の昔の川幅とか考えるとムロクボ尾根からとりついたと考えるのが普通だし、実際オツネが通ったのはムロクボ尾根のようだ。 こちらはこちらでヌカザス尾根との合流点手前はかなり厳しい道らしく、また奥多摩ロープウェー入り口の偵察もできるのでこっちを通ってもよかったのだが、バス停が一つ(陣屋で降りるとなると二つ)先になってしまうのと、麦山のドラム缶橋を渡ってみたいのでやはりヌカザス尾根に行くことにしよう。

 そんなわけで小河内神社前のバス停に降り立った。 天気予報は晴れだが、空はすりガラスをはめたようにぼんやりしていて肌寒い。 先週あたりからだいぶ気温が上がっていたので中間着にマイクロフリースではなくiHEATのジップアップジャージで来てしまったが、去年の今頃鷹ノ巣山に登ったときには頂上付近にはたっぷり残雪もあってかなり冷えていたんだった。 ウェアの選択をしくじったかなと思ったが、太陽が昇れば気温も上がるだろうし、登りに入れば体も温まるだろうととりあえずアウトドアジャケットを着たままストレッチをする。 こいつは防風には頼もしいが透湿性が無いに等しいので、体が温まったら適当なところで脱がないとビッショビショになってしまうのだ。

 登山口へ向かう前にドラム缶橋を渡る必要がある。 これは通称で二か所ある浮橋はそれぞれ「麦山浮橋」「留浦浮橋」と名がついているのだが、みんな○○のドラム缶橋と呼んでいる。 浮子にドラム缶を使っていたのは昔の話で今は樹脂製のフロートなのだが、長く続いたイメージはそう変わるものではないのだろう。 ちなみに闇に葬りたい死体を沈めるのは東京湾ともう一つここが定番というイメージがあったが、オーヤブとか松本清張とか大田蘭三とか森村誠一の読みすぎであろう、たぶん。

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 浮橋はジョイント部分に微妙な段差ができるのと、少し揺れるので微妙に不安感がある。 今日はそれほどでもないが、悪天候の時はもっと揺れて危険なのかもしれない。 とりあえず左手に見えるきれいなピラミッド(御前山)で気を紛らわしずんずんと先へ進む。
 橋を渡ってから登山口までがまたちょっと舗装路歩きなのだが、登山口の手前にまた似たような林業用作業道の入り口があってちょっと紛らわしい。 登山口のほうはちゃんと看板が貼ってあるのだけどね。

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 ここからようやく登山が始まるが、ひとつ気になっていたのが花粉の問題であった。 昔やった検査では反応が出ていたのは二種類のダニ(要はハウスダスト)だけで、杉、ヒノキとも反応しなかったのだが、ここ最近妙に鼻がむずむずするし、ノーガードで吸い込み続けていたらそのうちコップから水が溢れるようにアレルギー反応が出るようになるかもしれない。 先週あたりから奥多摩の花粉飛散状況はすごいことになってて、これを体に取り込むのはちょっと恐ろしい。

ちなみに前日の時点でこんな感じ
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 そんなわけで、今回は自転車に乗るときに使っているスポーツマスクを装着して登ることにした。山中ですれ違った人には奇異の目で見られるだが、まあどうってことあるまい。

 登り始めると序盤からきつめであったが、奥多摩は尾根筋に出るまでは急傾斜なのはどこでも共通している。 何度も登ってる大岳山の千足沢コースもそうだし、三ツドッケのヨコスズ尾根、御前山の湯久保尾根もそうだ。 そんなわけでここまではあくまで想定内のきつさである。 もうすこし歩いて体が目を覚ましたら意外と難なく進めるかもしれない・・・と思い始めたころ後ろのほうで人の気配がした。 振り返るとカツカツとストックの石突の音とともにオレンジ色のジャケットの登山者が登ってきていた。 平日でしかも花粉がすさまじく舞っている中登る人はいないだろうと思ったのだが、どうやら20分ほど後のバスでやってきたらしい。 と、いうことは20分差を簡単に詰められたわけでなかなかムカつくというか情けない事なのであるが、ブランクが長いし仕方あるまい。 それでも簡単に抜かれるのは癪なのでちょっとペースを上げたら同じ程度のスピードになったのか、その距離はほとんど縮まらなくなった。

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 最初の小ピークであるイヨ山で甘納豆をつまんでいるとオレンジ色ジャケットの人が追い付いてきた。 今日の予定を聞くと槙寄山を経て数馬に降りるとのことで全く同じだ。スマホを取り出して写真を撮っていたのでちょっと聞いてみたら、ドコモの電波は入っているという。 ムロクボ尾根~ヌカザス尾根のあたりは奥多摩湖周辺でも不感地帯になっていたと思うが、尾根筋だけはうまくすれば入るようだ。 auだとからっきしなのだが、そろそろキャリアを変えることを考えたほうがいいのだろうか。

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 とりあえず先に出発させてもらってイヨ山を下りヌカザス山を目指すが、ここからが本番であった。 稲村岩尾根や大休場尾根でよく言われるる「すぐ前の人のかかとを見て登る」傾斜のきつさになってきたのだ。  体は目を覚まして調子が上がってくるころなのに辛さが増すというのは相当なものだ。 イヨ山のあたりまでは「これが奥多摩三大急登はちょっと過大評価では」と思っていたのだが、ここで早くも認識を改め「うむ、さすが。これは奥多摩三大急登に恥じないきつさだ」となるしかなかった。  特に厳しいのはヌカザス山の頂上手前で、この辺では転倒したらそのまま下までころんころんと転がっていきそう。ムロクボ尾根とはヌカザス山の頂上で合流しているはずだから、むこうも相当きついに違いない。 こっちは遊びであるが男に会うためにこんなところを登って行ったオツネも相当なものだ。 

  脹脛が悲鳴を上げるのをなんとかなだめすかしながら登高を続け、9:37にヌカザス山頂上に到着。ここでまた残りの甘納豆をつまんでいたらオレンジ色ジャケットの人が再び追いついてきた。 この人は多分またここで長めの休憩をとるはずなので先に行かせてもらう。 

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  ムロクボ尾根との合流点は頂上のすぐ先にあるはずなのだが、道標はあっても道らしい道がみあたらない。 不思議に思って道標の示す先に行くと立ち木にロープが結わいてあって、それが急斜面にぶら下がっていた。 そういやヤマレコで読んだ記録に『合流するところが一番大変』と書いてあったが、ここまで凄まじいとは思わなかった。 また来ることがあったらムロクボ尾根から登るのも面白そうだ。

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 先はまだ長いというか、「オツネの泣き坂」はここからが本番だ。 ここからはややザレた感じの土に枯葉が積もっており、置いたそばから足が滑って引き戻されるような感じになる。 最初にロープが張られていた場所は大したことなく「過保護じゃね?」と思っていたのだが、次に現れたロープ場はパワーロスが大きくなりそうなので素直にロープの力を借りた。 こういうところで無理をして足が攣ったりしたら目も当てられないではないか。 ここを越えて入小沢ノ峰までやってくるとえげつない急坂はすこし緩やかになった。

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 そういえば、下のほうは薄っ暗い杉林だったのがこの辺りはブナ林なのだろうか、まだ葉は芽吹いていないのだけど雰囲気が全然違う。 時折キツツキのドラミング音が聞こえてくるし、幹には食痕(穴)が綺麗に開いていた。

 前のほうに連なるいくつものピークが近くなると斜面に少し残雪が出てきた。 ヌカザス尾根は北側の斜面の上に、1月末の雪ではかなり凄まじい積もり方をしたとのことだったので残雪が心配でチェーンスパイクを持ってきたのだが、一部登山道にうっすら残っているところはあってもチェーンスパイクを装着するほどではなかった。 しかし、溶けた雪のせいでだいぶぬかるんでおり、登山道の路肩部分はうかつに体重を乗せるとグズグズと崩れそうだ。 ここは慎重にやや山側に寄って歩くことにして残雪帯を通過。 ここを抜けるとようやく山頂直下の御堂峠の分岐だ。

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 ちなみに昭文社の「山と高原地図」のコースタイムではだいたい3時間半ぐらいであり、これは結構シビアというかタイトめであるとはいえ、同じくらいのタイムで着きたいなと思っていた。 が、時計を見るとちょうど11時。 大体15分オーバーの3時間45分かかっていた。 やはり2月の気管支炎とその後の天候不順でトレーニングをサボっていたのが覿面に効いてしまったようだ・・・。 

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 ところで三頭山というからにはピークは三つあり、やはりちゃんと全部踏んでおきたい。 大人数が弁当を広げられるような広い山頂は西峰だけなのだが、最高点は中央峰、三角点が置いてあるのは東峰なのである。 昼食は西峰でとることにしているからまずはさっさと中央峰と東峰に行っておく。  三つ峠山で御巣鷹、開運、木無の三つを全部踏むよりはるかに近いし労力も大したことはないのだから億劫がってはいけない。 

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 東峰・中央峰を踏んでノルマは果たし、最後に西峰に登ると、うす曇り空の向こうに富士山がもや~んと姿を現していた。 前回もどんより曇っている中うっすら富士山が姿を現してくれたのだが、よくよくこういうシチュエーションにあたってしまうようだ。 まあ濃霧で何も見えないよりだいぶ救いがあるのだけどね。

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 ここでは早速富士山が見える特等席のベンチでザックを下ろし、バーナーで湯を沸かす。 前回は小学生の遠足に当たってしまい食事をせずに退散したので、ようやく三頭山での頂上ラーメンを堪能できる。 やはり真夏であるとか、山頂のベンチが山の茶屋の所有物でバーナーを使うのに遠慮がいるところを別にすればなるべく頂上ではラーメンで〆たいものだ。
 湯を沸かしているとオレンジのジャケットの人が登ってきたが、写真を撮るとさっさと笹尾根のほうに向かってしまった。 どうやら混む山頂は避けて昼食はもっと先のほうで摂るらしい。 ひょっとしたらこの先に自分の知らない好スポットがあるのかもしれない。

 できたラーメンをそそくさと啜り、食べ終わったら素早く下山に移る。 大岳山のように眺望が良ければもうちょっとまったりしていたいのだが、富士山と石尾根方面が木々の間から見えるとはいえそれほど眺望が抜群というわけではないのと、花粉のせいか花曇りなのか、あまり視界が効かないので長居する気にもならないのだ。 とりあえずプランAでは下山後には温泉が待っているし、プランBでも笹尾根を笛吹峠まで下っていく長丁場になるので早く出発するに越したことはないのだ。
 
 
頂上から降り、前回大滝のほうへ曲がって行ったムシカリ峠の分岐を直進し、大沢山方面を目指す。 峠のすぐ先には三頭山避難小屋があり、ここにはトイレもあったので水分を出しておく。 小雉は苦ではないのだが、三頭山のように比較的人の多い山だと撃っている途中に人がやってくる恐れが大であるし、単独行遭難で意外とよくあるのが立小便をしようとしてバランスを崩して滑落というやつなのだ。数年前に金時山でもそれで死んだ人がいるので、余計なリスクを避ける意味でもここのように安全に出せる場所ではなるべく出しておいたほうがいいのである。

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スッキリしたのでふと気になって避難小屋のドアをガラガラと開けると、これはまた清潔で居心地のいいログハウス様の避難小屋であった。御前山や鷹ノ巣山、雲取山に比べて新しくてくすんでいないことに加え、窓が多いせいか明るく感じる。 以前泊まった雲取山避難小屋や噂に聞く酉谷山と違って棚の上に寝袋や毛布の類が備え付けられていないが、ここで泊まることを前提にしたスケジュールを推奨していないからなのだろう。 そうは言ってもこれだけ清潔で快適そうな避難小屋だと、スケジュールどうこう以前にここに泊まること自体を目的にして寝袋持参でやって来たくなってしまうのだが・・・ 

 真冬にここで泊まるに来ることを妄想しつつ、避難小屋を離れると、大沢山の頂上近くのベンチでオレンジ色ジャケットの人が食事をしていた。 なるほど、陽だまりだしベンチはあるし、頂上が混んでいるときはこちらのほうが落ち着いて食事ができそうだ。 自分もここで小休止をとりアミノ酸顆粒を飲み下す。 またまたオレンジ色ジャケットの人に頭を下げて先行させてもらい、槇寄山方面へと下っていく。

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 ふわりふわりと蝶が道案内するかのように飛んでおりなかなか気分がいい。 雲が切れ太陽がやや強く照ってくれたのだけれど、この気分の良さは長く続かなかった。しばらくすると太陽は再び雲に隠され、雲はより厚みを増してきた。降ることはなさそうなのだが、お天気屋の自分としては明るさが落ちるとテンションも落ちる。 一応数馬に降りて温泉に入るつもりで高吸水スポーツタオルと垢すりタオルは用意してきたのだけど(タオル代をケチる気満々)、時間の余裕や状況によっては笛吹まで足を延ばすことも考えてはいた。 しかし槇寄山に着いたら評判の眺望も雲に隠れて台無しになっているし、ここから先へ進んでも樹林帯に入って眺望は落ちるし日も落ちて暗くなる一方なのでどうにもやる気が失われてしまった。

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そしてもうひとつ問題だったのがバスである。笛吹まで足を延ばすと1時間半ほど余計にかかるのだが、そうするとバスの谷間の時間にあたってしまい1時間ほど無駄に待機しないといけない。 絶景がみられるならまだしも眺望のない杉林を余計に歩いたうえにバス待ち時間が増えるだけなのは温泉と天秤にかけるまでもない。 当初の予定通り数馬方面へ下り温泉をめざす。

 それにしてもここで気づいたのだが、この3月終わりごろというのは奥多摩の山を登るのに梅雨の次ぐらいに向いていない季節ではないかと思う。 花粉は凄まじい量が飛散しているし、そのおかげで晴れていてもなんか靄って遠望が利かなくなるし、広葉樹はまだ新芽が吹いていないので貧相な感じがしている。 これならキンキンと音がするような真冬のほうがハードでもずっと楽しいだろう。

 ある程度斜面を下っていくと右側が杉林になりさらに退屈になる。 途中、「国定忠治の遠見の木」なる場所があるのだが、眺望が全く効かないのでここらへんに生えている木のどれかによじ登って遠くを眺めたのか、昔はこんなに杉の木が植えられておらず眺望があったのかも判然としない。 

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 これが紅葉シーズンでナナカマドやウチワカエデの森だったら違うのだろうが、こうなってしまうと頭の中はもう全面的に「はやく温泉!温泉!」となり、視野も狭くなる。 時間的にはまだ十分余裕はあるのだが、気持ちのゆとりはほとんどなくなっていた。  むしろ舗装路に出てからのほうが斜面にへばりついているような集落に植えられている梅が満開でなかなか良い気分だった。 

 途中何かのお寺のような建物との仏像が奉納されているらしきお堂があったのだが、立札の文字が褪せてしまって全く読み取ることができなかった。まったくこういう事をされると余計に気になってしまうではないか。

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謎のお堂

 謎のお堂を過ぎてそのまま下り続け、いよいよ温泉が近くなってきたのだが、ガードレールの向こうに「せせらぎ遊歩道」と書かれた案内板がある。これまた色あせてなんか頼りなげな雰囲気なのだが、温泉の建物の近くに出るようだし、道路歩くより良さそうなんでガードレールをまたいでせせらぎ遊歩道を通ってみることにしてみた。

 ところが通る人がほとんどいなくなっているのか、遊歩道とは思えないほど道は荒れている。おまけに開けたところに出たと思ったら、そこは薄気味悪い廃墟であった。 進んでいくと朽ちた建物がいくつもあり、その中の一つには「中の平バンガロー」と書かれている。 広場らしきところには屋根が倒壊し横倒しになった流し台が下敷きになっている。 どうやら利用者の減少によって管理人もいなくなった町営バンガローのようだ。

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 建物の向こうから鉈を持ったジェイソンや刈り込み鋏を持ったクロプシーが出てきてもおかしくなさそうな雰囲気である。まだ日が高いうちだし川の向こうの通りには車が走っているからまだなんとかなっているが、これがもっと日が落ちたらとてもじゃないが通る気にはなれない。 早々に通過して足早に温泉へと向かうが、かけられていた木橋は腐ってかしいでおり、最後の最後まで危なっかしい道であった。

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腐ってやがる

 壊れかけの木橋を渡るとようやく立派な温泉センターの建物が見えてきた。 浅間嶺からの下山で立ち寄った時は定休日で悲しい思いをしたが、今日はちゃんと営業している。 今日は準備良くタオル、垢すりを用意して来たが、受付でチケットを買う時に尋ねたら、なんとここはタオルはレンタルではなく買い取り制なのであった! 考えてみればここは増富の湯や大菩薩の湯以上に最寄りの町との交通の便が悪いし、リネンサプライ会社に出すにも大変なのかもしれない。それにしても銘が入っていてお土産になるフェイスタオルはまだしも、バスタオルまで荷物が増えるのはあんまりうれしくない。 タオル類を用意して来た今日の自分は実に冴えていた。

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 お湯はかけ流しではなく間伐材の薪で焚きなおしている加温循環温泉だが、やはり登山のあとの温泉は格別。 ヒノキチップの香りに癒され、気分のいいひと時を過ごすことができた。 やはりゴールに温泉地があるならそちらを選ぶのが正解だなと当たり前のことに気付くのであった。




ところでオツネさんだが、その後どうなったかっていうと美青年の坊さんにはフラれてしまったんだそうである。自分は寺から動かず女の子に大変な山越えをさせておいてなかなかにひどい話だ。

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コメント

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No title

Piccoliさん、こんにちは。

三頭山は超有名な山なのに、一度も登ったことがありません。
都民の森から登るのが一般的だと思うのですが、月曜は都民の森へのバスがないんですよ、確か。

このヌカザス尾根から登るのはなかなか大変そうですね。
それでなくても北鎌倉から奥多摩へ行くのは時間がかかるし、日帰りじゃしんどそうです。

だけどドラム缶橋とか、面白そう(笑)。

No title

MorosawAさん コメントありがとうございます。

都民の森周回コースは楽ではあるんですが、シーズンオフのバスの便が良くないのですよね。
オンシーズンでも帰りのバス便が1時間半おきぐらいなので、下手な時間に降りると待機が増えてしまいますし。

自分のとったコースの反対、数馬から登って奥多摩湖に降りるって手もあるんですが、ヌカザスやムロクボの下りがちょっと不安かな、と。

ただ、武蔵五日市から都民の森までのバスはワインディングロードで結構酔いやすい(疲れていると数馬からですら酔いますわ)ので、MorosawAさんの場合は数馬側から登ったほうが良いかと。
武蔵五日市から数馬までのバスのほうが本数が多いし早い時間からあるので、早出ができますしね。

ただ、北鎌倉からだと始発で出ても武蔵五日市まで2時間以上かかっちゃうのがネックですかね。 トラブルがなければ7:14に武蔵五日市着、7:19発のバスに乗って8:17に仲の平に降りられる計算ではあるんですが・・・・。
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Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

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