スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

清八山~本社ヶ丸で今年もラッセルラッセル

 5日、都内でもショボショボと雪が降ったが、ライブカメラで確認したところ山梨では結構降っている感じであった。 都内ではそのうち雨になったが、こちらより気温の低い山間部ではずっと雪だろうからはるかに積もっているんではあるまいか? と予想した。 その予想の下、トレースのない雪面に自分の足跡をつけてやろうじゃないの!と笹子駅から登る清八山に決めた。まったく持って身の程知らずである。 大菩薩でもいいのだがこないだ登ったばっかだし、やはりちょっと変化が欲しいのだ。

 ちなみに清八山といえば去年も今頃積雪がたんまり残っているところに入山したが、トレースをたどっているうちに登山口に入る前から盛大に道を外れて森の中の支尾根に入り込んで1時間ほど森の中を彷徨した挙句スタート地点に戻ってしまい、このタイムロスで日没までに下山できずヘッドランプの明かりの中消耗しきって下山という醜態をさらした山である。

 その後秋晴れのさわやかな日に三ツ峠まで縦走し、これがまたなかなか楽しい山だったので、今回できたら雪の三ツ峠も見てみたいところであるし、可能ならば三ツ峠まで縦走してやろうと目標を立てた。 ただ、無雪でもかなりの長丁場(居心地のいい山頂だったので長居してしまったというのもあるが)だったので、ただでさえ日も短いこの時期に雪で余計に時間のかかりそうなコンディションではトラブルが無かったところで日没までに下山できない可能性もある。 そんなわけで、「午前11時までに清八山の山頂につけなかったら本社ヶ丸へ、12時までに着けなければ来た道を引き返す」と決めてた。もっとも清八山~三ツ峠間は雪の積もった状態で歩いたことはなく、この設定とて適切なのかどうかわからないのだが…。 

 前日あまり早く眠れなかったうえに、目覚ましが鳴る数時間前から何度も目が覚めてしまいろくに睡眠をとっていない状態でJRに乗り込む。 本当は始発で出発したいのだが、そうするとほとんど寝る時間が無くなってしまうので例の京王線乗り換え便だ。 自宅の周りではほとんど雪は残っていなかったが、高尾駅に近づくにつれて線路沿いの建物が白くなり始めた。これは期待できそうである。 そしてJR中央本線に乗ると、どんどん真っ白になっていく。 ただ、融けずにフカフカな状態で残っているとはいえ積雪量自体は大したことがなく、10㎝前後であろうか。 

「う~んこれだとスノーシューは無駄な荷物になっちゃうかな…」と微妙に落胆が入る。 実は去年、1月に大雪があった後Amazonnで安物のスノーシューを勢いでポチってしまったのだが、その後の積雪は大したことがなく埃をかぶっていた。 スノーシューゲレンデに泊まりがけで行くような暇もないし、あわよくば今日の積雪でデビューさせたいと思っていたのだが、これではまるで重石を持ってきたようなもんである。

 とりあえず笹子駅に降り立ち、登山口へと向かう。 駅から登山口までの車道と林道歩きが長くかったるいのだが、今日は雪景色なので少し気がまぎれる。それでも車両に通られたりすると「変電所まで乗ってくか?」ぐらい声かけてくれてもいいのになあ、と不満に感じてしまう。 ところが今日は変電所まで行く車はなかったようで、途中の工事現場と思しきところで轍は止まっていた。



 ここから先は俺一人…と思ったが、すでに一人の足跡がある。 自分が一番乗りと思ったのでちょっとムッとなるが、始発電車入りしたのだろうか。 足跡によってはうっすらまた雪を被った様な感じもあるので、雪がやまぬうちに入った可能性もある。 時折笹子の観光案内のブログに日の出を山頂で迎えて写真を撮る人がいるので、ひょっとしたらその人が朝日+雪景色を狙って深夜のうちに入山したのかもしれない。 それじゃ技術・体力・経験のすべてで敵うわけもないのですこし穏やかな気持ちになって足跡を追う。

 変電所の前に来たところで蒸れを感じジャケットを脱ぐ。 このサウスフィールドの2.5層ジャケットは防風性は素晴らしいのだが、カタログスペックとは違い透湿性は無いに等しくものすごく蒸れるのだ。 で、脱ぐと内側にしっとり結露していたりするのだが、今日は気温が低いせいかぱりんぱりんに氷結しており、脱いだとたんパラパラと氷のかけらが落ちていった。 気温にしたらマイナス7~8度前後だろうか? この分だと山頂辺りはもっと冷え込むだろうと考えると、ワクワクするような恐ろしいような。

 脱いだジャケットをザックの雨蓋に挟み、魔法瓶のお湯を飲んでいると、後ろから中年の女性が追いついてきた。 一本遅い電車でやってきてバスで追いついてきたのだろうか。 どちらにしても雪の直後、こんなマイナー山を狙ってくるなんて物好きな方である。 装備は洗練されてる上にかなり使い込んでいるようであるし、経験・実力とも自分よりありそうな人だが、ベルト式のアイゼンは装着に時間がかかるようでまたしばらく自分が先行することになった。

林道2

 変電所から先は舗装されておらず石がゴロゴロのイマイチ歩きにくい道だが、このぐらいの雪を被っていると凸凹が均された上にクッションが効いて逆に歩きやすい。 実際には余計二時間がかかっているのかもしれないが、雪景色に気がまぎれていたこともあり、三ツ峠へ縦走していった時よりも気分的には早く着いた気がする。

林道3

林道4


 登山ポストを過ぎ、まだ育っていない植林帯を登り始めると積雪が少しずつ厚くなって来た。 では、そろそろ、と言う感じでスノーシューをつけてみたが、事前に装着テストをしなかった(だって雪降ってないんだもん)ので、なかなかカッチリと嵌められない。モタモタしているうちに先ほどの女性が追い抜いていってしまった。 これで焦ってしまい、びみょーに緩んだまま登り、すっぽ抜け、また嵌めなおしては登りとまるでペースが上がらない。 

登山道1


登山道2
 
 で、一つ問題があった。 スノーシューってのは本来平坦~緩斜面で使うものだが、この清八山の北面登山道はかなりの急坂まうえ、登山道もそれほど広くないのであまりスノーシューには向かないのである。ちなみにスノーシューでもMSR ライトニングアッセントとかTSL 305エスケープといった一流メーカーのものは急斜面用にチューンされているのだけど、自分が購入したのはそういう一流メーカーの1/5程度の値段の特売品(ノースイーグル)でそんな機能は望むべくも無い。 さらに悪いことに、一応雪団子が付着しないようにスパイク部分にはチェーンルーブを吹きかけておいたのだが、これが低温ではまったく用を成さずあっという間に スパイクが詰まってグリップ力がなくなってしまった。 一歩踏み出すごとにずるっと半歩ほど滑って引き戻されてしまうのである。 
 
登山道3


 パワーロスが大きすぎるのでスノーシューは早々に放棄しアイゼンに付け替えることにした。 頂上まではただの重石になったわけで先行き暗いなあ、とず~んとテンションが下がったのだが、さらに悪いことに今回新調したアイゼンも事前に装着テストをしていなかったのでうまく嵌らないのである。 去年本社ヶ丸に登った際、頂上稜線はガッチゴチに氷結しておりチェーンスパイクの甘い爪では食い込みが足りず少し怖い思いをしたのでエバニューの10本爪を購入したのだが、ベルトを締めてもいまひとつフィット感が甘く、登っていると少しずつ緩んでくるのである。
無いよりはるかにマシとはいえ歩いているうちにズレてくるアイゼンを何度も直すのは面倒だし、ペースも上がらない。 

登山道4


 そして無駄にゆっくり進んで無駄に寒気に当てられているせいか、本当に気温が寒いせいか、冷気がグローブを突き抜けて手がしびれてきた。 正確に言うと他の4本は「かじかんできた」程度なのだが、小指が尋常じゃなく痺れてきたのだ。 ちなみに今日はREIの二重グローブなのだが、アウターグローブを着けているとカメラの操作やベルトの締め付けがやりにくいので外しており、途中からインナーフリースグローブだけを着けていたのだ。 だったらさっさとアウターグローブも嵌めればいいのだが、紛失防止のコードを嵌めたりとかがこれまた面倒くさいのと、「どのくらいまで耐えられるか」「凍傷なりかけってどんな感じか」という度し難い好奇心に押し切られて、何度か立ち止まっては激しく手を擦り合わせては「よし、嵌めるのは峠に出てからにしよう」と決めてしまった。 1500m級だからいいようなものの、これが八ヶ岳とか南アルプスだったらフツーに指の運命にかかわるので良い子は真似してはいけない。

時おり手を擦り登高を続けふと振り返ると、背後に南アルプスや大菩薩の山々が木々の間から見えるようになってきた。大沢山や笹子雁ヶ腹摺山の稜線より高いところまでやってきたわけで峠まであと少しということだ。

 と、前方に登山道に入ってすぐ自分を追い抜いていった女性が見えた。 どうも正規のルートが吹き溜まりになって腰まで積雪が来てしまい進行不能になったので引き返して樹林帯を突っ切ることにしたらしい。 見ると、斜面の途中まで雪を踏んだ跡があるが、確かに尋常じゃなさそうな積雪だ。 パワーも時間もだいぶ消耗しただろうにスノーシューを持ってた自分が大きく遅れて何の力にもなれなかったのがなんとも申し訳ない気持ちになる。 女性は「正規の道のほうは踏み跡がなくなっていた」と言っていたが、そういえば足跡の一つは峠の方に向かわないで清八山の頂上の方へ直登していた。そちらの方がよかったのかどうかは判らないが・・・。

 アイゼンの調子は相変わらず不安定なので女性に先行してもらい、ようやく峠に到着。登山道は北側斜面なのでここまで来てようやく明るく開放感が出てきた感じだ。見回すと峠から降りる通常のルートの踏み跡はあるようなのだが、やはり昨日の雪が吹きだまった所為で途中で埋まってしまったようだ。

女性は本社ヶ丸へ向かうとのことなのでここで一旦別れ、自分は清八山へ向かう。 それにしてもとにかく樹氷が美しい。日当たりの悪い北側斜面で今一つ意気が上がらなかったが、稜線に出た途端こんなご褒美が待っているとは。 最後にやや急な登りをズボズボとトレースを追いながら頂上へ向かったが、どうしたことか? 山頂手前の小さなコブのところでトレースは忽然と消えてしまった。 風で足跡がだんだん不明瞭になって消えて行ったとかそういう感じではなく、深い足跡が本当に突然無くなってしまったのである。

山頂へ1
キラキラ樹氷

山頂へ2
あら、トレース消えた

 一人でラッセルしてきてここまで来れるくらいだったら頂上まで行けないはずはないので不可解ではあったが、最後の最後、頂上までの登りをまっさらな雪を踏んで自分のトレースをつけられるというのはご褒美のようでもある。 ここは喜び勇んでズボズボと最後のラッセルを行い頂上を踏ませてもらった。



この山の山頂は狭いのだが本当にまあゾワゾワと震えるような絶景で頂上に着くたびに雄たけびをあげてしまう。

富士山と南アルプスもそうだが、今日は近くの道志の山々や下の町も雪化粧しているので美しさが際立つ。

山頂1

山頂2

山頂3

山頂4

山頂5

この景色をずっと眺めていたいッ! と言うぐらいの絶景だったが、風がビュービュー吹いてきて立ち止まっているのも辛くなってきた。とりあえず動かなくてはならないのだけど、時間を見ると11時30分。 既に三ツ峠に向かうタイムリミットは大幅に過ぎている上に、当然のことながら三ツ峠へ向かうトレースはできていない。これで三ツ峠に向かったら日没までに下山はおろか登頂すら怪しい。 途中まで行って清八林道からエスケープと言う手段も無くはないが、それは達成感もないしあまりにも面白くない。 おまけに駅までの帰りも無駄な舗装路歩きが多くなってしまいそうなので、ここは昨年も経験していてある程度計算ができる本社ヶ丸に行った方がいい。 そう判断すると踵を返して今来た道を峠に向かって引き返した。


(後編は続きを読むをクリック)
 



ずっぽずっぽと深い雪を踏んで清八峠に戻り、本社ヶ丸に向かう。 向こうにはピークが見えているが、以前登っているので知っている。あれは偽ピークというか前衛峰というか、「造り岩」とよばれているやつで、本ピークはずっと先なのだ。 キラキラと美しい樹氷の中をうんせうんせと進んでいくと向こうから先ほどの女性が引き返してきた。 「まずはテラスまで行ってみますわ」とのことだったが、あまりにも雪が深いのと、テラス(造り岩)まで行ったところでさっきの強風に吹かれたので引き返したらしい。 体力、技術、経験、根性的にも自分よりありそうな方であったが(だってこのコンディション選んで単独行だよ?)、安全マージンを多めにとっての撤退の決断のようだ。

 自分はここまで実質ラッセル泥棒であるし、清八山から引き返す間は樹林で風はある程度避けられているので先行の女性より消耗は少ないはずではあるが、つま先足はジンジンと冷たくこれ以上気温が低く風が強いと少し厳しそうではあった。 ただ、女性によるとトレースは先まであるみたいなので何とかなりそうでもある。 とりあえず自分ももう少し先まで行ってそこで様子を見て決めよう、と女性と別れて本社ヶ丸方面へ向かうことにした。 

造り岩1

造り岩2


トレースがあるとはいえ完全に道にはなっていない中をズボズボと進みまずは造り岩に登る。 確かにテラスというかバルコニーというか、ちょっとだけ平らに広がっていて、木が切れているので眺望が利きなかなか気分がいい。 前回来たときもここで振り返ったが、序盤のタイムロスで焦っていたのだろう、あまり印象に残っていなかった。 今日は時間的にまだ余裕があるのと、前回よりさらに鮮烈な雪景色のおかげでグッと味わい深い気がする。

造り岩3

造り岩4

とはいえ、ここに立ち止まってばかりもいられない。 まずは次に見えているごつごつした岩が雪を被っている前衛峰に向かう。

前衛峰a1
前衛峰その1

 前回もなんとなく覚えているのだが、雪を被っているためとにかく足がかりも手がかりもなかなか見つからない上に両側が切れ落ちているので非常に恐ろしい。 甲斐駒も怖かったのだが、あそこはどこか適当なところで止まりそうな気もするし、すぐ脇にハイマツが生えているので少し恐怖感が和らいでいた。しかしここはしくじって左側に落ちたら10数m真っ逆さまに叩きつけられる感じなので恐怖感がより強い。おまけに手がかりも足がかりも頼りないのだから不安感は相当なものだ。グローブで岩の上の雪をはたいて手がかりを探し、木の枝が出たら掴み、足を恐る恐る乗せて滑らないか確認してから体重を乗せ、次の手がかりを探す。 

前衛峰a2
右側の崖 左側も切れ落ちている


 三点確保とか頭では分かっているのだが、どうにもおぼつかず、少しづつしか登れない。 しかし悪戦苦闘の末ようやく前衛峰を登りきった。 向こうに本社ヶ丸主峰らしきものが見えて少しほっとする。 ちなみに「らしき」と書いたのは実際にはこれが第二の前衛峰というか偽ピークで、この時点ではその存在をすっかり忘れていた。

前衛峰a3
前衛峰その1から来た道を振り返る

前衛峰a4
清八山がもうあんなに遠く。 ここまで来てしまうともう峠に戻るのもつらい

 樹氷の間を縫って本社ヶ丸(の前衛峰その2)を目指す。稜線で吹き付けられた雪が美しいのだが、氷結していずサラサラの雪もたっぷりついているので低木の枝の下をくぐった拍子にバラバラと落ちてきて襟元に雪が入ってしまい冷たさで飛び上がったりした。 あわててジャケットのフードを被ったが、視界が少し狭まるのも困ったものだ。

前衛峰b1
雪がバラバラ落ちてきてひゃっこい

前衛峰b2
うーんしかしキレイ

前衛峰b3

 それにしても着雪した枝と雪だけの中を歩いていると、なんだかまったく違う世界に来たようだ。 大菩薩では鳥がまるで自分をからかうかのように周りを飛び回り鳴き声やドラミング音を立てていたのだけれど、昨日の雪のせいで巣にこもっているのか鳥の気配もしない。加えて さっきまでの強風も収まっているし、雪が吸音材になっているのか何の音もしない。 自分が雪を踏む音と呼吸音も雪に吸い取られていくように静かだ。 この異様に静かな不思議感覚もまた冬の雪山の醍醐味だろうか。


黙々とトレースをを追っていくとだんだん雪が深くなり、時には膝上までズボっと入り込んでしまうようになった。 先行したのはおそらく一人だけで、本当に「足跡」しかなく、大菩薩の時のような「道」は確立していないのであいた穴を外すとズボっと行ってしまうのだ。

前衛峰b4
ひええ

さあ、あとは先に見えるあのてっぺんが山頂だ、と元気を出して進むのだが

前衛峰b5

これはまたまた前衛峰(その2)で、その先にもう一つピークが見えたところでようやく前回も「いい加減にしろや!」とキレかけたことを思い出した。ところがこの第2の前衛峰を越えたあたりでまたトレースが消滅してしまった。 稜線のちょっと下を通っていたのが途中で無くなっているのである。 どうやらまた雪が深くなってしまったので、一旦引き返して稜線のてっぺん~右側(南)の斜面から仕切り直ししたようだ。 
トレース消滅

 一旦引き返すと木々の隙間を踏み分けて小さなコブのてっぺんを通り稜線に出ているようだ。 再びトレースを追い、本当に今度こそ山頂までの最後の登りに向かったが、ここにある樹氷は強い風に吹かれていたのか、「エビノシッポになりかけ」みたいな感じで非常に美しかった。 まさに雪の芸術品と言おうか。 丹沢や大菩薩では雪が降った日から数日経過していたのとバカみたいな好天が相俟って樹氷はなし、去年の大岳山では申し訳程度の霧氷だったので、これは大きなおまけを貰ったようなものだ。

ミニエビしっぽ

美麗樹氷

 オプションに気をよくしたが、本社ヶ丸主峰の最後の登りはやはり危なっかしい岩場で最後にひやりとさせられた。 「ここは難しいからやめて引き返そう!」と思ってもさっきの前衛峰(その1)の雪を被った危なっかしい岩場を下るのはそれ以上に危険なのでここまで来てしまうともう引き返せない。

最後の難所


 進退窮まって救助を呼ぶのもかっこ悪いので必死度70~80%くらいで登りをこなす。とりあえず落っこちる心配の無い傾斜に来たところで呼吸を整え、半分へっぴり腰になりながら山頂へ最後の数mを進む。 そうしてタタミ数畳ほどのそれほど広くない本社ヶ丸山頂へ到着した。ストックをついたまま登れる清八山と比べて、若干危険なところのある本社ヶ丸。 疲労と恐怖の余韻がある分感動に浸っている余裕はないが、やはり達成感は大きい。 なにより途中で風が収まってくれたのは助かった。 清八山で吹いていた強い風が間断無く吹いていたら自分も造り岩で引き返していたかもしれないのだから。

本社ヶ丸山頂から

本社ヶ丸山頂から2

 山頂からの眺めはやはり絶景だが、こと富士山に関して言えば清八山よりもこちらの方が隠すものが少ない分雄大に見える。 さっき見たときと違い、山頂~中腹に雪煙が舞っているのが見える。 おそらくこことは比べ物にならないおっそろしい風が吹いているのだろう。 今日の好天で富士山を狙っている人も少なからずいるのだろうが、この風では非常に厳しい登山を強いられていそうだ。

本社ヶ丸山頂から3
雪煙がすごい

ふと時計を見ると12時50分。 清八峠からの標準タイムは3~40分程度のはずだが、清八山から1時間20分…おそらく峠からは1時間以上かかっていた。 ある程度道が分かってトレースを追うだけなのに、積雪があるというだけでこうまで時間がかかってしまうものか。 12時10~20分だったらここで湯を沸かしてラーメンを作り昼食をとりたいところだったが、この調子ではこの先どれだけ時間がかかるか分かったものではなく、のんびり食事をしている余裕は無いのは明らかだった。 前回は一人分のトレースしかなかったとはいえ表面がクラストしていて踏み抜かずに歩けるようなところもあったが、今回は新雪で前回よりも雪が深いのだ。  仕方なくひと通り写真を撮ったところでカロリーメイトと甘納豆をほおばり、すぐに出発することに決めた。

山頂にて
んもうヘトヘト


 おっと、その前にGPSの電池に給電せねば・・・と単三電池USB給電装置を嵌めたのだが、中のエコフル電池がダメになっていたのか、低温で働きが悪くなっていたのか、挿したとたん給電ランプはプッツリと切れてしまった。 GPSは「もうすぐ電池が切れますよ」の警告赤ランプをけたたましく点滅させている。 去年に続きまたもこの山の山行の後半はGPSログが取れないことになりそうだ・・・。


下山1
静謐

 下山に移ると前もそうだったが、ここからさらに雪の量が増えてきた。たしか去年は風で吹き溜まったのが雪庇のようになっていて恐ろしかったのだけど、今日のところはまだそれほど庇のようなものは形成されていないようだ。ただ、とにかく雪が深く、恒常的に膝下~膝上の高さになっている。 先行者はよくこんなとこをツボ足で進んだものだと感心してしまったが、こちらは一歩一歩足を抜くのがいい加減苦痛になってきた。

下山2
膝上までずっぽし

 山頂直下の急斜面を降り切ってややなだらかになってきたところで一旦ザックをおろし、登りで役に立たずザックに括り付けたままのスノーシューを着けてみることにした。 丁度アイゼンのラチェットベルトに雪が噛んですっぽ抜けそうになっていたのでちょうどいいタイミングだ。
 さっきは登りの途中、不安定な足場で焦って装着していたためスノーシューのラチェットベルトもきっちり締まっていなかったようなのだが、今落ち着いて嵌めるとさっきよりはるかに靴にがっちりと固定されているようだ。歩き出すと登りの時よりはるかに歩きやすい。 フカフカ新雪のためやはり沈み込んではしまうのだが、沈み込む深さは明らかに浅くなっているうえ、底付きの感触も無くなってツボ足よりずっと楽である。もっともすこし傾斜が急激になるとスノーシューの下の雪ごとボフッと崩れて滑ってしまうのではあるが。

 ふと後ろを振り返るとスノーシューの足跡というより雪かき用のママさんダンプを押していったような荒っぽいというか汚らしいトレースになってしまっているが、先頭の人の足跡だけよりも多少は後続の人には歩きやすいだろう。

下山3
きたねえトレースだ


 静かな雪の森の中を黙々と進む。 以前ヤマケイだったか岳人だったかで珍しくこのドマイナーなコースを紹介していたのだが「登る人も少なく落ち着いていて静山派におすすめ」とのことだった。その静かな山が雪によってさらに静謐になっている。風も完全にやみ、するのは自分の息遣いと雪を踏む音だけだ。 おぼろげながら覚えている景色と足跡を頼りに下り続けると、視界が広がって鉄塔が見えてきた。

下山4
静かな雪の森を過ぎると…

下山5
222号鉄塔

 222号鉄塔と言って宝鉱山方面との分岐である。 山の中で鉄塔を見るといつも美しい景色をぶち壊す無粋な建造物として不快になってしまうのだが、ことほとんど人と会うことが無く不安になりがちなこのルートでは道を過たずに順調にたどっているありがたい目印だ。 ここは比較的開けていて日当たりも良いため、時間的に余裕があったら風に吹かれやすい山頂ではなくここで昼食をとる考えもあったのだが、やはり時間的には厳しく昼食はお預けにしてカロリーメイトを齧りテルモスの湯を飲むだけにした。

 向かう先には角研山が見える。 ここまで下ってまた登り返すのはつらいが、この道しかないので仕方がない。 それにしてもしょっぱなからここまで、前回よりもはるかに深いラッセルのため足にかなり疲労がたまってきた。 太ももに乳酸が溜まってる感じの重さがあるのに加え、膝も微妙に痛い。 バカ尾根を下るときのような衝撃を何度も受けての痛みではなく、雪から抜くために普段より高く足を上げなければいけないので、普段使っていない筋肉や腱が悲鳴を上げているのだろう。 
 
 とはいえ、ただでさえ時間のかかる雪山、のんびり歩いてもいられない。バカ尾根のように迷いようがない広い道ならまだしも、雪で登山道が不明瞭、加えて一度しか通ったことが無く不案内なこの山で以前のように暗くなって足元も覚束なくなった中降りるのは御免こうむる。 今日は目立ったトラブルもないのに既にだいぶ日も傾いてきた。 自分はいつも冬場は午後2時ぐらいになると日も傾き日差しも弱くなってくるので焦りが出てくるのだが、その焦りはじめるタイムも既に過ぎている。  
 特に眺望が利くわけでもない角研山の頂上に着いたところで写真を取り、さらに先へ進む。 ここからの下りで木の根っこや岩が露出しているところも増えてきたのでそろそろスノーシューを脱ぎアイゼンに履き替えた。

 さて、ここから通称「ヤグラ」と呼ばれる鉱山用ロープウェーの残骸まで尾根道を進み、そこから斜面を下りて沢を渡り、林道に出て笹子駅に向かうのが前回通ったルートであり、今回もそのルートを取ったつもりだった。 ところが、
 
 ←笹子駅 ↑鶴ヶ鳥屋山 


という分岐の標識のところで本来は直進しなければいけないのだが、疲れていて判断力が落ちていたのか「鶴ヶ鳥屋山までなんかいくわけねーだろ 初狩駅まで下りなきゃいけないし」と思い込んでしまい、左にルートをとってしまった。もちろん、これまでずっと頼りにしていたトレースが左に折れていたこともあったのだが。

 そのままトレース追っていくとヤグラの残骸があるはずなのだが、なぜかヤグラに行きつかず、不思議と斜面をどんどん降りていく。違和感を宙ぶらりんにしながら進むと、林道に出てしまった。 おかしいな、ヤグラを折れてから林道に出るはずなのだが・・・・。 しかし、林道には再び山道の方へ入っていく「笹子駅」への道標もある。 道を下っていくと森の木は少しまばらになり、正面には笹子雁ヶ腹摺山らしき山が正面に、下の方には国道と笹子の町の建物が見える。 おかしいな、前はこんな景色は見えなかったはずだが…以前より時間が早くて明るいとはいえ…。

 ここで地図を確認すればいいのだが、ザックを下して地図を確認するのも億劫でそのまま登山道を下り続ける。 雪は浅くなりラッセルというほどのことでもなくなってきた。そしてまた鉄塔の脇を通る。 前回も終盤に鉄塔の脇を通った記憶があり「やっぱり間違ってないのかな?」「まさかと思うがトレースをたどるのに夢中になってヤグラを見落とした?」「雪でヤグラが倒壊して埋まったのかな?」と正常化バイアスによる思考に行ってしまった。 

 明らかな間違いに気づいたのは、2つ目の鉄塔を見た時だ。 

下山6
!?

「2つも鉄塔なかったよなあ…」

 それでも、下っていくにつれて広葉樹林から植林の針葉樹林に変わっていくのも同じで、どこでどう間違って自分がどこを通っているのかもわからぬままトレースを追うしかできなかった。 そのうちに足跡に人間のものでないものが混ざり始める。 人間のものに近づいたり離れたり、どうも綱を離した犬が飼い主にじゃれたり勝手にその辺に走り回ったりしながら進んでいる感じである。 トレースの足跡が増えているようにも見えなかったが、ここまで別の人間が犬を連れて上がってきたのか。 もうすぐそこまで民家があるのか、と下りつづけると、そのうちに沢のようなところに行きついた。 が、おかしい。 前回は沢というより小川と言ってもいいくらいの幅と水量だったが、ここは干からびた水無川のようだ。 加えて言えばこんなところにポンプ小屋みたいなのはなかったはずだ。 しかし、先の方に林道があるのでそっちに進むしかあるまい。 林道に出るとすぐ前がもうJR線がある。しかも駅は山から見て右側にあり、JRを左側に見て歩いて行くのである。 前回は駅は左の方にあり、建設会社の作業事務所というか、作業員の寮のようなプレハブ小屋を右手に見て歩いていたはずだ。 ここに至って完全に違うコースを取ったことを認めるしかなかったが、駅前のオブジェが見えると漸く安心することができた。 とりあえず、真っ暗になる前に駅に着くことはできたのだ…。

 雪がだいぶ浅くなったのでアイゼンを外してリュックに括り付け、駅を通り過ぎる。 前回は降りた時点で真っ暗になってしまい周囲の売店も全て閉店しておりお土産を買えなかったので今日は買って帰りたかったのだ。 
 
 まずは名物、笹子餅を2箱購入。 かつては売り子が笹子駅にもいたらしいのだが、駅の無人化に伴い道の駅などでの販売が主流になっているようで、小さな店舗に置いてある品も少なかった。

下山7
有名な店だけど小ぢんまり

 次は笹一酒造に向かう。 小さな酒屋かと思っていたがでっかい醸造工場とスーパーマーケット並みの売り場面積を持つでっかい即売所があり多少面食らう。 迎えてくれたのはなぜかハッピにチョンマゲの被り物をしたおっさんで、吹き出しそうになってしまった。 自分はあまり酒は飲めないのだが、友人への土産に吟醸酒と焼酎を購入した。 吟醸酒を試飲してみると、日本酒を飲むと喉が締め付けられたようになってしまう自分でもつるんと抵抗なく飲めてしまう喉越しと口当たりがいい。どうやらこのお酒、「笹の誉」は只者ではないようだ。


お土産を購入し数キロ重くなったザックを背負い、笹子駅に戻る。日は落ちてしまったが、まだ前回より明るさが残っている。 トレースを追っているうちに訳のわからない道を通ってしまったことに多少の引っ掛かりを感じつつ、美しい樹氷と静謐の中の登山、山頂の絶景とハードなラッセルを堪能したことに満足しつつ電車に乗り込んだ。


 電車の中ではやることが無いのでメモっておいた鉄塔の番号と地図を照らし合わせると、何のことはない、角研山の分岐から降りてしまったようだった。 そう、手作りの「←笹子 ↑鶴ヶ戸屋山」 の看板のところで直進すべきところを曲がってしまったのは明らかだった。 そういえば、前回は角研山からヤグラの分岐まで「まだか、まだか、」と焦るぐらい歩いた記憶がある。あの時は笹子駅から本社ヶ丸に登り、清八山から下りる逆ルートで通ってきた単独行の男性と本社ヶ丸山頂直下ですれ違い、それを頼りにしていたので迷わずに済んだのだった。 
 
 前回も今回も他人の足跡頼みで下山していたが、今回は地図の確認もせずに降りていたわけで、先行者が何かの間違いを犯したり、トレースが吹き消されていたら一発で迷う可能性もあるわけで、大変まずいことに間違いあるまい。 充実感はあったがまた反省点が山と出てきてしまった山行だった。
スポンサーサイト

テーマ : 山登り
ジャンル : 趣味・実用

コメント

非公開コメント

プロフィール

piccoli

Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
月別アーカイブ
ブログ内検索
最近の記事
最近のトラックバック
最近のコメント
リンク
フリーエリア
にほんブログ村 自転車ブログへ にほんブログ村 自転車ブログ ツーリングへ にほんブログ村 釣りブログへ にほんブログ村 釣りブログ 波止釣りへ にほんブログ村 マリンスポーツブログへ にほんブログ村 マリンスポーツブログ シュノーケリングへ
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。