中里介山の小説は読んだ事無いけど大菩薩峠に行ってみた

 払沢の滝に行って以降、休みのたびに台風が来たりなんだりの悪天で行こうと思っていたところに行けないまま10月後半が終わってしまった。 うまく好天なら山、自転車、秋サバ釣りとローテも回せたのに一つとして行く事ができなかった。 

 ちなみに行こうと思っていた山は大菩薩嶺と三ツ峠でどちらも山梨の山だ。 9月に甲斐駒に登った帰りに甲府でほうとうでも食ってくるかと思っていたのだが、下山後長時間バスに揺られているうちに胸がむかむかして食欲がなくなってしまい、そのまま電車に乗ったためほうとうを食い損ねていた。 その事もあって、「よし、次回こそは下山後にうまいほうとうでも食うか!」と考えていたのだが、大菩薩嶺の登山口のうちお気楽に頂上に行ける上日川峠行きの平日のバス運行は10月下旬まで始まらず、おまけに毎日出ているわけではないので運行日に休みが合わないと行けないのだった。 で、ようやく運航日と休みが合ったと思ったらあの台風の連発である。

 で、いよいよ決行なるかと思われていた29日はよりによって前日になって天気の悪化が予想されたため中止、急遽1日に予定を変更してようやく出発となった。 しかし本当に10月は会社の売り上げも悪かったし散々な1ヶ月であった。

 目覚ましより30分早く目が覚めたが、あまり食欲も無いので牛乳ぶっ掛けグラノーラをかきこんでさっさと出発。 予定より早い便に乗ったため乗り換えは余裕で済んだ。中央本線で高尾を出発したら唐突に眠気を催しストーンと寝落ち。ハッと目を覚ましたら目的地の甲斐大和の一つ手前、笹子を出発したところだった。ジャストタイミングと言うか危ないところと言うか・・・。
 
 バス停には既に登山者らしきおっさんが数人並んでいた。 何度か来た事があるらしくバス事情について教えてもらったが、何でもこの栄和交通のバスは、

*山岳路線なので定員自体少ないうえ立ち乗りは不可(補助いす)
*満員になったら時間前だろうと出発
*乗り損ねた人が出ても増発便はなし

というおっそろしい仕様とのこと。満員と見るやすぐに臨時便・増発便が出るカナチュウ丹沢路線とえらい違いではないか。 帰りのバスも上日川峠からは3時で終わりだし、このへんが平日でも登山者が押し寄せる丹沢との差を産んでいるのであろうか。

 バスは補助席を一つ二つ出す程度の満席で出発。 山の中のワインディングロードを行く。 紅葉が綺麗なので車内から写真を撮ろうと思ったのだが、気温が低いせいか窓ガラスがあっという間に曇ってしまうのと、ところどころ送電線が入ってしまうので結局撮れずじまいだった。 まあいい。山に入ればいくらでも撮れるだろう。

 上日川峠でバスを降りると空気はかなりひんやりしている。朝晩は冷え込むと言う予報のとおりだ。とりあえずジャケットを着込み、軽くストレッチをしてからGPSのスイッチを入れ、トイレを済ませて周りの紅葉を写真に収める。ここの高度(1700m)がちょうど紅葉の盛りなのだ。 

大菩薩1

大菩薩2
 
 登山道は途中までは車道と併走しており迷う心配も無いので気楽に進める。 朝の光を浴びて快適な道を進んで行くが、すぐに変調が始まった。 無性に腹が減ってきたのである。

大菩薩3

大菩薩4

 朝は軽く済ませてしまったとはいえ、電車とバスはずっと座っていたし、まだ大した距離を歩いたわけではないのに何でこんなに腹が減るのだ。とりあえず適当なところに出たら何かつまもう。 そうしてしばらく行くと立派な山小屋が現れた。 赤軍派が武闘訓練をしているところを警察に踏み込まれ、一網打尽の逮捕劇となった事で有名な「福ちゃん荘」である。

大菩薩5

 小屋の前は広場のようになっており、休憩にもいい感じだ。 あまり長居するつもりも無いが、とりあえずザックから今回初めての出番となったミルクケーキを取り出してポリポリとかじる。ケーキといってもコンデンスミルクをそのまま固めたようなやつだ。 山形土産として食べた事がある人もいるだろう。


 これで腹が膨れたわけでもないが、甘いものを口にするととりあえず誤魔化せる。 もう一枚のミルクケーキをザックのウェストベルトのポケットに入れ、すぐに出発。ちなみにここ福ちゃん荘は大菩薩嶺の頂上に直登する唐松尾根と大菩薩峠へ向かう道に分岐に位置しているのだが、ほとんどの人はすぐに頂上に行ける唐松尾根へ進むようで、大菩薩峠へ向かう人はほとんどいなかった。 自分は丸川峠へ下っていく予定なので大菩薩嶺に直登してしまうと大菩薩峠への往復が無駄になるので峠周りのルートなわけだが、これだけ広い道であまり人が行かないと不安になってしまう。

大菩薩6


 すぐ後ろからさわやかな青年が追い抜いていったので一安心だが、向こうの足が速い上に写真を撮りながらちんたら進んでいたらあっという間に引き離されてしまったので、すぐに周りに人がいない静山派お気に入りのシチュエーションになった。 とはいえ道は広いし、マイカー入山派か小屋泊早朝出発派かは判らないけれど、上から降りてくる人が時折やってきてですれ違うので完全なる孤独と言う感じもしない。 

 傾斜もそれほどきつくなく歩きやすい道を進んでいくと、途中苔むした巨岩がゴロゴロと転がっている場所を通過した。 以前海沢探勝路を下っていった時もこういうのを見た覚えがある。 たぶんここが沢の源流部で、下に水が流れている岩だけにびっしりと苔むしているのだ。

大菩薩7


 耳を澄ますと岩の下から「こぽこぽ・・・ちょろちょろちょろ・・・」という優しい水音がする。 
「うむ、この豊かな森が保水力を持ってよい水源なっているのだなあ・・・グッドネイチャー!」と寺門ジモンのようにひとりごちつつ更に先へ行くと、森が開けて行く手に山小屋が見えてきた。 壁に白いペンキででっかく「介山荘」と書かれているのが見える。どうやら大菩薩峠に到着したようだ。

大菩薩8
介山荘

 がっちりとした作りの山荘とお土産売店の脇を抜けていくと、「大菩薩峠」と大書きされた立派な道標が立つガイドブックどおりの風景が広がった。前方には前衛峰の親不知ノ頭が聳え立ち、そこへ向かう登山道がくっきりと見える。 丹沢山~蛭ヶ岳でもそうだったけど、こうやって自分の向かう先の峰と道がくっきり見えるというのは本当に気分のいいものだ(疲れてるとげんなりするけど)。

大菩薩9
有名な峠

 先行していた青年が小休止をとっていたので道標の前で交代で写真を撮りあったのち、全景を見回すようにカメラに収める。晴れているとはいえ視界はいまひとつで、南アルプスは白峰三山が見えるだけで甲斐駒は雲に隠れてしまっていた。 それでもこの場所と風景が織り成す解放感は素晴らしい。 日が落ちるのが早いしバス便も少ないのでそういうわけには行かないが、ここでゆっくりバーナーで飯を作ってゆっくり食べたいものだ。
 
 とりあえずここではもう一枚のミルクケーキとソイフル(ソイジョイのパクリ菓子。おいしい)を半分食べて行動再開。 気分のいい登山道を進む。ちなみに前に見えてる峰は最初大菩薩嶺と思っていたのだが(距離感いい加減だな)、手前にある「親不知ノ頭」であった。 大菩薩嶺まではその先にある賽ノ河原や、神部岩、雷岩と言った小ピークをいくつも越えねばならずここからは見えないのだった。 とはいえ、とりあえず眺望が開けて、ピークらしき所までガッと登ってゆく方向が見える峠から親不知ノ頭までが気分的に盛り上がる核心部といっていいのではなかろうか。

大菩薩10
介山の文学碑

 ごつごつした岩場を越え親不知ノ頭にやってくるとケルンが次々と現れる。 右へ曲がり下っていくと荒涼としたの賽ノ河原だ。 ここに林立するケルンは道標でも遭難死者を悼むものでもなく、「一つ積んでは父のため~」ってアレなわけだ。

大菩薩11
賽ノ河原

 しかしいくら荒涼としているとはいえさわやかな秋晴れのこと。 積んでも積んでも鬼にぶっ壊される絶望の場所という雰囲気はあまりしない。 特に一つのケルンは石積みというよりびろーんと横に広がったピラミッドのようになってしまっており、それは賽ノ河原の石積みとしてどうなのよと突っ込みを入れたくなるような立派さで思わず笑ってしまった。 ここに限って言えばどんより曇っていたり、雨・霧のほうが相応しいのだろう。

大菩薩12

大菩薩13

大菩薩14
雷岩

 賽ノ河原を後にして眺望のよい神部岩、雷岩と進んでいく。 雷岩は大菩薩嶺の山頂の手前の小ピークだが、大菩薩嶺山頂は木に覆われて薄暗く、まったく眺望がきかないのでこちらで食事や休憩をとる人が多いのだ。 自分は丸川峠あたりで食事にするつもりなのでここは通過する。そして、雷岩の先の樹林帯を進んでいくと地味ーな標識が立っている大菩薩嶺頂上となる。 

大菩薩15

 
 ただの峠なのに眺望は抜群、小説のタイトルになって、でっかい標識も立ち、おまけに立派な休憩舎や山荘もあり文学碑まで立っている大菩薩峠と比べると、眺望も利かず、樹林に囲われて薄暗く、平坦部が少なく休憩にも不適、標識もちっこく地味とあまりにも不遇な山頂である。 

 そしてこの時、これに追い討ちをかけるようにどんよりどよどよと雲が出てきて太陽も隠れ、ひゅるひゅると冷たい風が吹いてきた。もとよりここで食事にするつもりもなかったが、あまりに寒々しい雰囲気に居たたまれなくなって山頂の標識と自分を入れた自分撮りもすることなくそそくさと降りてしまった。

(後半は続きを読むをクリック!)
 
 
 
 
峠と比較するとやや不遇な山頂を後にして丸川峠への路を下っていく。こちらから登っていっても良いのだろうが、人は安きに流されるもの。登りも下りもタイム的にお気軽な唐松尾根や大菩薩峠(上日川峠側)のほうを選ぶ人が多いのか、人の気配があまりしない。

 山の北西側斜面に面しており日照も少ないせいか、全体的に上日川峠側に比べて気温低め、湿度高めな気がする。樹林は落葉広葉樹ではなく亜高山帯の常緑針葉樹コメツガが主体で、倒木や岩には緑の絨毯のようにみっしりとコケがついており、登山道もじっとり湿っている。 樹木+このコケがスポンジの役割を果たし、降った雨をゆったりと保持しているのだろうと思わせる。


大菩薩16

 
 倒木に生えたコケの間から新たなコメツガが芽吹いていると「おお、森の新たな命の誕生! NHKの自然番組みたい!」と子供のような感激を覚えてしまった。殊に鹿の食害や過多気味の登山者による侵食で荒れ気味の丹沢と比べて、自然というか森が勝ち気味なのを見ると安心できるのだ。

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 心配していた天気も再び持ち直し、やわらかい木漏れ日が差し始めた。そんな静かで居心地のいい森の中の道を下っていくと、ぽつりぽつりと色づいた広葉樹が現れ始める。 昼飯がまだなので空腹に耐えかねカロリーバランスを一本頬張りさらに進むと、山頂から一時間ほどで明るく開けた丸川峠へと到着した。

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丸川峠

 それまでのコメツガ森林から、ぱっとスイッチを切り替えたように明るいススキ野原と鮮やかに色づいた広葉樹へと変化した。 山小屋の前にベンチがいくつかあったのでここで昼食を摂る事に決めた。 ザックからバーナーを取り出し、おにぎりを頬張りながら湯を沸かす。 今日は普通のカップ麺ではなく、マグカップにちょろっと作れるマグヌードルみたいなやつだ。
 
 丸川峠は日当たりも良いとはいえ、秋のこの時期、しかも1500mを越える高さではやはりアツアツの物がおいしい。削ろうと思えば削れる荷物ではあるがやはりバーナーを持ってきて正解だ。ここでゆったりと食事時を楽しんだら後はバス停まで降りるだけ・・・と思ったら、ここからが意外と長かった。

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 黄葉&紅葉はここから1000mぐらいまでの間がまさにクライマックスだったのでついつい立ち止まってしまいシャッターを切ってしまうのである。鮮やかに色づいた木が現れるたびカメラを出したり入れたりでは一向にペースが上がらず、丸川峠分岐に降り立ったときにはバスまで後40分を切っていた。

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 ここからバス停までの所要時間は覚えていなかったが、最低でも20分はかかりそうなのであまり余裕があるとも言えない。 このためちょっと気になっていた雲峰寺はスルーして早足で車道を下っていった。 茶屋の前に来ると、ザックを下ろした登山者が数名ベンチに腰掛けてボーっとしていたのでここがバスに間違いあるまい。バス時計表を見るとまだ余裕があったが、寄り道してバスを逃すと次はまた1時間以上待たねばならないので無理は禁物だろう。

大菩薩31


 やってきたバスは超ローカルらしく、つり銭の用意が少ないため千円札での続けての両替はできず、一人がコインで精算をしないと次の人は両替ができないというすさまじい仕様だった。前に座っていた壮年の登山者が100円玉の用意があったので、その人に500円玉を渡して200円のおつりをもらいまとめて精算してしまうという変則対応で事なきを得たが、丸川峠に降りる方はあらかじめ300円分のコインの用意をしていたほうが良いだろう。

 後ろに座っていた地元のおっちゃんが若者に大声でご当地案内をしていたので自然に耳に入ってしまったのだが、何でも駅から自動車で30分かそこらのところに馬鹿でかいショッピングモールが出来たことでマイカー族はみんなそっちに買い物に行ってしまい、塩山駅周辺はシャッター街になってしまったそうな。 たしかにバスから眺めると空き店舗の張り紙ばかりだし、駅前商店街も閑散としている。 
 
 冒頭で書いたように甲斐駒の帰りにほうとうを食おうと思っていたのを果たせなかったので今回チャンスがあったら、と思っていたのだが、昼食が遅かったのとこのシャッター街の惨状を見たことで意気消沈してしまい、またも食べることが出来なかった。 自分は喧騒が苦手とはいえ、やはり駅前ぐらいはウザイくらい賑やかな方が安心できるものであるね。
 
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Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

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