憧れの南アルプス! 甲斐駒ケ岳(2967m) 2日目(前編)

 
☆☆☆写真が多いので、二日目を前編後編に分けてお送りいたします☆☆☆

 
 
 
 トイレに起きた後、隣の布団にいた同宿者の鼾でなかなか眠れず、ようやく寝付いたと思ったら数時間で目が覚めてしまい結局計5時間半しか眠れなかった。途中目が覚めずに熟睡できていれば3時半起床でも9時間以上眠れたはずなのになんてこった・・・。 前日の寝不足を取り戻すつもりがこれで完全に目算が狂ってしまった。 

 それでも「あんまし眠れなかったということはそれほど疲れていないことかも」と負け惜しみを捏ねつつ朝飯に向かう。 普段は朝はあまり食欲がないタイプなのだが、今日は長丁場かつハードな行程をこなすためしっかり食っておかないといけない。 メニューはご飯とアサリの味噌汁に卵焼き、納豆、佃煮と数種類の漬物と和え物と正しいニッポンの朝食といった感じ。納豆のパックに添付しているタレがなぜか普段食っているおかめ納豆のタレの3倍ぐらいの分量でビシャビシャになってしまったが、いったいどこのメーカーなのだろうか。 

 流石食事に定評がある仙水小屋、朝食はノリや佃煮だけが当たり前の山小屋にあって珍しいぐらいおかずの分量が多いのだが、日の出に間に合うことを考えるとあんまりのんびり食べて食休みもしていられない。 あわただしく食べてお茶をすすったらすぐに外に出て靴紐を結び、脚のストレッチをしてヘッ電を灯し出発する。時刻はAM4:33。 そういえばこのヘッ電を使うのは東日本大震災の計画停電、本社ヶ丸からの下山、富士山夜間登頂に続いて4度目となるのだが、電池残量はどのくらいだろうか。 

 LEDライトは電池の消耗が遅いので交換も忘れがちになり、どうかしたら液漏れで本体丸ごと台無しにしてしまうことがあるので気をつけなければいけないのだが・・・。そういえば大学時代に鍾乳洞で使うために購入したパナソニックの防水ヘッドランプ(初代)は電池を入れっぱなしにしたせいで液漏れでぶっ壊した苦い思い出がある。 二代目のコールマンはバンドの伸びと電球切れで修理する気もなくなって処分、三代目のOHMは焦点調節リングが1年かそこらで速攻で割れ・・・とどうにもヘッ電を長持ちさせずに壊してしまうことが続いているので、今使っている奴は性能も満足しているし長く使いたいと思っているのだが。

 山荘からはしばらく原生林の中を進む。 林の中はさしたる傾斜もないし「踏み跡をたどればいいんだろ?ちょろいちょろい」と思っていたのだが、10分ほど進んで踏み跡が不鮮明になってるところであっさりとルートを見失ってしまった。 すぐ後ろからやってきた人が「こっちじゃないですかね」と正しいルートをすぐに見つけたのだが、自分が不注意すぎるのが夜闇を舐めてはいけないということなのか・・・。

 森林を抜けると氷河期の名残である「ゴーロ」と呼ばれる巨岩とガレ石がごろごろ転がった岩礫帯となる。不安定な浮石や隙間が多いので足を踏み外したり捻らない様に注意しなければいけない。 大体のところは人が何人も通って石が磨り減って砂礫になっていたりするのでルートの見分けがつくのだが、途中ごっつい石を乗り越えたりして踏み跡が消えたところでまたルートを見失った。 このとき周囲には自分も入れて3人いたのだが、3人そろってルートを見失ってしまったのだ。 すでに空はほんのり白み始めて最初の目標地点である仙水峠はもう正面に見えているから、このU字谷を真っ直ぐ進めば多少のトレースを無視して突っ切ってしまっても着けるのだろうが、やはりある程度ちゃんとトレースをたどったほうが無駄な労力を使わなくて済むので、ある人(俺)は真横に斜面に上り、ある人は真っ直ぐ進みルートを探す。 結局ルートは多少左側斜面にずれていただけだったが、ヘッ電に頼らなければならない薄明かりでなくちゃんと日が昇っていればこんなにルートを見失うこともなかっただろうと考えると、やはり夜間行動とは恐ろしいものである。

 このルート見失い箇所以外は足場が多少悪い以外の困難はなく5:10に仙水峠に到着。 自分より先に山小屋を出発した人は日の出を無視して先に進んだのか、峠には誰もいなかった。 2000mを超えているだけあって流石に寒く、寝るときに着込んだフリースジャケットは小屋を出発するときにも着たままだったのだが、流石に此処まで来ると汗ばんで来た。しかしまだ太陽の光が出ていないので立ち止まるとたちどころに体が冷えるので、結局日が昇るまでは着たままでいることにした。

仙水峠1
日の出前の仙水峠 

仙水峠2
摩利支天の影

 少し明るくなっているので周りを見渡すと、周囲は人の背ぐらいある巨大なケルン(石積みの塔)が10数個
林立している。 山頂の目印だったり慰霊のためだったりルートの目印だったりするものだが、同じところにこれだけ並んでいると壮観と言うか不気味と言うかなかなか異様な雰囲気だ。 賽の河原の石積みってこういうものだろうか。
仙水峠3


 そうこうしているうちに後続の中高年の団体や大学山岳部と思しきグループが到着し賑やかになってきた。 山小屋でがっつり朝食を食べたのでぜんぜん腹は減っていないが、皆行動食をつまんでいるので自分もつられる様に甘納豆を2~3粒口に放り込む。 

 そしていよいよ日が昇り始めた。 富士山の時はご来光を見るために夜間登頂した意味がまったくないような酷い天候だったが、今日は昨日に続き雲ひとつない快晴! 地平線にも雲や霞がかかっていない恐ろしく澄んだ空気のおかげで、これまでに何度か初日の出を見に行ったときにも拝めなかったような見事な日の出を見ることができた。なんというか富士山の借りを見事に返した気分だ。 

仙水峠4
朝日

仙水峠5
朝日を受ける鳳凰三山 オベリスクが見える

 これから間違いなく気温が上昇するのと、この先急坂で激しい運動となるのでここでフリースを脱ぎザックにしまう。 そしていったん止めていたGPSのスイッチを入れ、予備電池としているUSB充電器に差し込んだのだが・・・アレ?USB充電器のライトが作動しない・・・。 なんてこった、これでは間違いなく途中でトラックログが切れてしまうではないかと呪詛をぶちまけたがどうにもならない。 せめて駒ケ岳山頂まで本体内蔵充電池がもってくれる事を祈りつつ5:35に仙水峠を出発した。

 ここからまずは小ピークの駒津峰を目指す。駒津峰までの登りは道中屈指の急坂で、稲村岩尾根や馬頭刈尾根への登りを髣髴とさせるきつさだ。 まずは先に出発した中高年の団体はすぐに追い抜いたが、同時に出発した単独行のおじさんにはあっという間に置いていかれ、後発の大学山岳部とおぼしき若者グループ、単独行の山ガールにも次々と追い抜かれてしまった。 体調は悪くないのだが、なにぶん富士山以降碌に山を歩いていないし、夏中盤の体調不良でトレーニングをサボっていたことでもう若くない身体がどんどん鈍ってしまっているのだろう。

 ただ坂がきついだけでなく、ハイマツやシラビソの根っこがところどころ露出し枝も道を狭めているためストックが扱いづらい。 ところどころ手をかけて登りたくなるような場所もあり、ダブルストックでスイスイというわけにはいかなくなってきた。 途中小さな平坦地があり先行の学生グループが後続を待って休憩していたので、ここで自分も一旦ザックを下ろし、ストックを一本畳んでくくりつける事にした。 ふと後ろを振り返ると鳳凰三山やアサヨ峰、仙丈ケ岳が朝日にまぶしく照らされている。 まだ先は長いがこうやって途中眺望が開けているのは励みになるものだ。 気合を入れなおして再び駒津峰を目指す。 
休憩場所
ストックを収納した小休止場所から見た仙丈ケ岳


 駒津峰の上部のあたりから森林限界になっているのかシラビソの高木が切れハイマツのみになってくる。 息を切らせながら歩を進めること数十分、ついに駒津峰の頂上に着いた。時刻は6:55だ。 頂上は広々としてすばらしい展望が開けている。 

駒津峰1
駒津峰 尻尾を巻いて逃げるなら左へどうぞ

駒津峰2
北岳&間ノ岳

駒津峰3
鳳凰三山&アサヨ峰&富士山
 
  
 
 
 
そして北東方向に目をやると、最終目的地である甲斐駒ヶ岳が
 

ドォ~~~~~~~~~~~ン
 

と聳えている。
駒津峰4
甲斐駒と摩利支天

 で、でかい。 思わず後ずさりしてしまいそうな迫力だ。それにこれから進む直登ルートの岩稜帯も進行方向真正面に見えているのだが、月に1~2回低山行くだけのお気楽ハイカーをたじろがせるに十分な厳しさを見せ付けている。 昨日山小屋で聞いた時点では「宿泊者の8割は直登ルート」「登りでは巻き道のほうがザレ場でずり下がる分消耗が大きく直登のほうが時間と体力の節約」ということで直登ルートを取ることに心が大きく傾いていたのだが、ここから見ると「本当にこんなとこ登れんのかいな」と自信が無くなってしまう。 とはいえどのルートをとるにしろ分岐はまだ先、まずはここから一旦下って分岐点まで行かねばならない。 ちょろっと先に目をやると、ここから両手を岩に添えたりする必要のある場所が増えストックだとむしろ危険になりそうなので再びザックを下ろし残り一本のストックを畳んで両手を空けるようにした。 



 ポケットから甘納豆を数粒取り出して口に放り込み、ハイドレーションチューブからスポーツドリンクを飲んで息を整えると、7:00ちょうどに駒津峰からの下降を開始する。 すぐに上から見た通り、両手で岩をつかんで慎重に足を運ばないといけないような場所が断続的に出現しはじめた。 両脇にハイマツやシラビソが生えているため恐怖感は少ないものの、ごつごつした岩やガレ石なので転倒したら即けっこうな怪我につながるだろう。 慎重な足運びが要求され、ただでさえ鈍って遅くなりがちなスピードが落ちていく。 ところが不思議なことに、駒津峰の途中で休憩していた大学生グループは自分よりはるかに早いはずなのに追いついてくることもなく、前にも後ろにも人がいないまま分岐点となる六方石(八合目)にやってきてしまった。駒津峰からはちょうど30分くらいだが、彼らが山頂でよほどのんびり休憩を取っているのかわからない。直登ルートで先行してもらって登るときの参考にしよう、あわよくば手を貸してもらおうというセコイ目論見はあっけなく崩壊した。

六方石
六方石

 六方石は駒津峰側から見るとどうと言うことのないでっかい岩だが、通り過ぎた小さな平坦地から振り返って見るとスパーンと綺麗に切ったようなサイコロ状をしている。それでようやく「なるほど、ここが六方石か」とわかるのだ。 この小さな平坦地で再び甘納豆を口に放り込み、スポーツドリンクを飲んで息を整える。 さあどうする、直登にするか巻き道にするか。 ここから見ると直登ルートは確かにとんでもない傾斜の岩稜帯で、
「もし行き詰ったら引き返そうと思っても引き返せないよ^^」
というアドバイスがまんざら脅しでは無い事がわかる。 

分岐
 分岐

 それでも意を決して赤いペンキで「↑直登」と書いてある矢印のほうへ歩を進める。正直怖かったが、 「ここをクリアできれば下山した後の達成感が違うだろうな」「いつまたここに来れるかわからないけど、この絶好のコンディションで体力のあるうちに直登しておけば、後になって直登ルートを登っときゃ良かったと後悔もしなくていいだろうな」という思いが勝った。


直登1
行ってみるか

 ペンキのある岩を超えるといきなり目の高さぐらいの岩があって、両手を岩にかけてグッと身体を持ち上げ、片足を大きく上げて足をかけて身体を攀じ上げる難所であった。 上に岩が迫り出していてザックが擦れる。ヤマレコで「直登ルートで本当の難所は3箇所、そのうちひとつは分岐の直後」 と書いてあったがなるほどここか。 

直登2
いきなりこんな感じ

確かにザックの横幅が広かったり、マットを括り付けたままだと引っかかりそうだ。 ズリズリ攀じ登りようやくクリア。 まずは第一の難所を越えたが、これで引き返せなくなったわけだ。 その後しばらく普通に歩けたり両手を使えば難なく登っていける岩稜帯を進んでいくと、左斜め前方にさびた鎖がぶら下がっているのが目に付いた。 ヤマレコやブログを読んだところ、どれも鎖が張られていないと書いていたから、これは使えないものだろう。 やはり鎖の張ってある岩の下に赤ペンキでバッテンと「危」が書かれており、進んだらいけないことがわかった。 かつてはこちらが正規のルートだったのだろうが、岩の崩落などで危険度が増してしまい打ち捨てられたものだろう。 ここで邪心を起こして鎖場のほうに行ったら大体ろくでもない事が起こるのが判っているのでおとなしく矢印のほうに進む。

 大体数mおきに矢印や○が書いてあるので迷うことはないが、濃霧で見失ったりしたら自分のような素人ハイカーは大変なことになるだろうな、と背筋が冷たくなる。 特に途中明白な踏み跡は右のほうに進んでいるのに、そっちのほうはどう見ても足を踏み外したらはるか下まで滑落しそうな急斜面で、これはおかしい、とふと左上を見ると剥げて薄くなったペンキ跡の左折マークがありその通りに進むとピンクのテープの目印がある、と言うようなことがあった。 この時は進退窮まったか、それでも滑落して重傷でも負わなければヘリに来てもらえば吊り上げてもらえそうではあるが、それはそれですっごくかっこ悪いよなあ、などと碌でもない想像をしてしまった。

直登3
難所を越えても頂上はまだ遠い

 そして第二の難所が訪れる。やはり両手をかけて身体を持ち上げ、足をかけて身体を攀じ上げ無いといけないのだが、手足をしっかりかけられる場所が離れており、短足の自分にはかなり無理な体勢をとらなければいけなかった。無理に足を縦に開いて足を上げなければいけないので足がつりそうになり、うっかり手を離すとズリズリと滑り落ちそうになる。 ロッククライミングとかボルダリングの講習でも受けていればまたぜんぜん違うのだろうが、残念ながらそんなのは習ったことが無い。 「3点確保をして、残り一箇所で次のホールドを探す」と口で言うのは簡単だが基本的な姿勢(身体はなるべく岩から離した方がいいらしいですね)からなっていないので力が入らず、無駄に筋肉に力が入っているので疲れもどんどんたまっていく。
このときばかりは「こんなきついところ鎖張っといてくれよー」と泣き言が出そうになったが、悪戦苦闘の末に核心部を突破した。 ちなみにこういう時は上に登る事に必死になってしまいまるで周囲は見えていないのであるが、ふと下を見たりしたら足がすくんで動けなくなったかもしれない。

 比較的足場が安定したところでふと後ろを振り返るとものすごい高度間!そして今まで通ってきた岩稜帯のえげつなさ。自分が通ってきたのが俄かに信じられない。ここまで来てしまうと「やっぱやーめた」と思ったところで引き返せないしエスケープルートも無いので頂上まで前進するしかない。

直登4
うん、引き返そうと思っても無理


 二つ目の難所を突破してさらに高度を稼いでいくと、足元がごつごつとした岩からザラザラとした粗い砂粒のザレになってきた。この辺まで来ると遮る物も少なく、風雨や日照による風化が激しいのかもしれない。 直登ルートは甲斐駒の南西稜になり、六方石を通過してココまでは朝早い事もあって日陰に入っていたのだが、日が当たるようになってきた。 高度が高くなって気温が下がったこともあって激しい運動をしている割には少し風が吹くと肌寒かったが、さすが太陽の力、ほんわかとした暖かさを感じる。 太陽の力を味方につけた気分だが、これまでは前に聳える段差の大きい岩が正攻法で立ちふさがっていたのに対し、ザレ場に変わったことで足元を掬うようないやらしい邪魔が入ってきた気がする。 油断するとズルッと滑ってそのまま数m滑り落ちそうだ。手をつけるところは岩に手を添えて慎重に進んでいくと、いよいよ最後の難関らしい岩場にたどり着いた。

直登5

直登6
ここを登るには・・・と

 最後の岩場はこれまでと違い両側に岩が切り立っており、横に大きく足を広出たりできない。 その分段差は前二つに比べたいしたこと無い・・・と思ったら足元が曲者であった。 ザレて滑るので踏ん張りが利かないのである。加えて岩の風化が激しく、手をかけるのはココ!と決めてかかった岩が脆くなっており、掴んで力を入れた途端パカッと割れて剥がれてしまった。 慎重に進んでいたから良かったものの、乱暴に登ろうとしていたら・・・。そしてすぐ後ろに人がいたら・・・。 最後の最後で冷や汗が流れる。 それでも前二つの難所を越えた自分に怖いものは無い。 ココを越えてしまえば頂上はすぐそこ。 じわりじわりと身体をよじあげ最後の難所も突破。 真っ白いザレ場と岩場を進んでいくとなにやら上のほうから話し声が聞こえる。 先行した人たちが山頂で話しているのだろう。 

 話し声に勇気付けられるようにガッシガッシと登っていくと急に視界が開けた。 平らな地面にとんがった大石がいくつか転がり、向こうには標識と小さな祠が見える。 やった!ついに山頂だ。 六方石からものすごい時間悪戦苦闘していたような気がするが時計を見ると8:30ジャスト。 1時間もかかっていなかった。
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Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

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