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富士山へ!(その2)

 息苦しさで目が覚めた。  というかほとんど眠っていない。 登高中も休憩中も、そして布団に入ってからも意識的に深呼吸していたのだが、眠りに落ちると呼吸はコントロールできない。 とたんに呼吸は浅く少なくなって、この薄い空気だと酸素が足りなくなり、息苦しさでハッと目が覚めてしまうのだ。 胸のむかつきと、風邪のひき始めのような頭がスッキリしない感じ、鼻炎がひどくなった時のような息苦しさ、そしてウイルス性胃腸炎のときのような膨満感と屁。 何のことはない、この高度でしっかり軽い高山病になってしまったのだ。

 椎名誠の怪しい探検隊とかNHKグレートサミットでなんとなく高度障害の辛さは知っていたつもりだったが、実際かかると(まだ軽いとはいえ)こんなに辛いものだったのか、と唸ってしまう。 とにかく深呼吸を繰り返すと吐き気も頭痛も一時的に治まるのであるが、落ち着いて眠気が勝ってきてすとーんと落ちて呼吸が浅くなったとたんに息苦しさと頭痛が戻ってきてもとの木阿弥、という状況なのだ。 なんかナチュラルに「眠らせない拷問」を受けているような気分だが、ここに来たのは自分の意思。とにかくだましだましでも眠りをとるしかない。 睡眠不足で疲労が抜けなければ結局、翌日の高度障害を悪化させてしまうからだ。

 30秒か1分うたた寝をしては飛び起きて5~10分深呼吸を何度も繰り返すうちに腹の張りと吐き気が耐え難いほどになったので、ついに布団から出てトイレに向かった。 これまで便意を感じなかったわけではないが、頭もスッキリしないしだるいしでトイレに行くのも面倒くさくなってしまうのだ。

 万年雪山荘のトイレは宿泊棟から廊下(半地下道)を通って別棟のトイレに行くのだが、途中の階段で女の人が座り込んで辛そうにしていた。 彼女も高度障害で眠れないのか、となんとなく同志を見つけたような気分になってトイレに入ると個室は半分以上埋まっており。中から「オエェ」「ウエェ」と嘔吐音のハーモニーが聞こえてくる。 なんだ吐きそうなのオレだけじゃないんだ、と安心すると同時に貰いゲロを吐きそうになって慌てて便座に抱きつくのだが、6時間前に食ったカレーは既に胃袋、幽門、十二指腸を通過してしまったらしく、腹を引っ込ませようが舌を出そうが、下の奥に指を突っ込もうが何も出ないのであった。 吐くものはないが、下腹部のさしこみも強くなったのでそっちの対応をとると、こちらはしっかりと出た。 

 出すものを出すと膨満感だけでなく吐き気も少し治まったので布団に戻ろうとすると、階段のところにへたり込んでいた女性が「空気が薄くて・・・」と辛そうに声をかけてきた。「起きてる時はいいんですけど、眠ったとたん苦しくなっちゃって・・・眠れませんよね」と返すと向こうも納得したようにうなずいた。 みんな辛いのだ。

 腹の張りがなくなった分少しはマシになったのだが、やはり眠りに落ちたとたん息苦しくて目が覚めるのパターンからは脱出できず、1時ごろには諦めて深呼吸して体に酸素を送り込むことだけを考えるようにした。
1時半には布団を出て出発の支度を始める。 朝食は2時からなのだが、とても食べられないので弁当にしてもらいリュックに詰めて山荘を出た。 

 気温は8度。昼間は16度くらい(体感はもっと高い)だったはずだから一気に8度も下がったわけだ。 冬の丹沢や本社ヶ丸よりずっと高いはずなのだが寒く感じる。 体が夏の暑さに慣れてしまったからなのか、空気が薄くてこちらの代謝が落ちているせいか、太陽が出ていないせいか、はたまた風のせいなのか・・・。 丹沢や本社ヶ丸では登っている時はアンダーウェアとマイクロフリースだけでウィンドブレーカーすら着ていなかったのだが、それではとても耐えられそうにない。 昼間着ていたウェアに防風フリースと、ウィンドブレーカーと共用の雨具(モンベル・レインダンサー)を着込み、昼間はつけていなかったゲイターを装着して出発した。

 空は雲が多いとはいえ所々に星が見えている。 これはひょっとしたらご来光が拝めるかな・・・などと考えていたら急に吐き気を催して足が止まった。 動いていなければ深呼吸で空気は足りているのだが、九合目から最後のきつい登りでは消費する酸素に摂取する酸素がぜんぜん追いついていないのだろう。 たちまちのうちに寝ている時と同じような頭痛と吐き気が戻ってきた。 とはいえ吐くものは何も無いので、ウエエ、オエエとえづいては呼吸を整えて登るしかない。 
 
 酸欠で吐きそうになるという体験は中学の時のリレーで立て続けに二回ダッシュをやった時、その次が自転車レースのラスト200mのスプリントの時だったが、どちらもあとは安静にしていれば良かった状況なのに対し、こっちはこれからさらに空気は薄くなってくるのだ。 これ以上症状が進んだら困るなあと思っていたのだが、幸い動けなくなるほどではないのでだましだまし進む。

 九合五勺には標準タイムを3分ほどオーバーして到着。 ゆっくり休みたいとこだが、他に休んでいる人が多くてベンチが埋まっているのと、トイレから悪臭が漂ってきて余計に気分が悪くなりそうなので適当に切り上げて出発。  ところで同じツアーで隣の布団になった宋さんという人はLEDのついた使い易そうなストックを持っており、ペースも同じくらいだったので彼についていったのだが、彼もしっかり高度障害が出たようでしっかり登山道脇にゲロをぶち撒いていたのであった。 
 
 九合五勺から先がいつ終わるとも知れない登りだったが、鳥居をひとつ通過し、なんか先が詰まっているようにライトの間隔が狭まってきたと思ったら、浅間大社の山頂鳥居、本当の頂上であった。
 
 ホントこの山頂が唐突で、真夜中で真っ暗闇なもんだからあとどのくらいで山頂というのがわからないし、周囲の景色も見えないので他の山に登った時のような達成感とかがいまいち感じられなかった。 それでも山頂(本当の山頂はまだ先だけど)に着いた事は間違いないので、ちょっと先行していた宋さんと落ち合うとがっちり握手を交わした。 土田さんも着いていたが、二人とも自分の調子が余りにも悪かったので、頂上まで辿り着けるか心配してくれていたらしい。まあそりゃ10分ごとにえづいていりゃあそうなるよねえ・・・。心配かけて申し訳ない。
 
 日の出まで1時間近くあるのでそれまで待たなくてはいけないのだが、山頂は時折強い風が吹くのでぼんやり立っていられない。 リュックからユニクロのペナペナダウンを出して着込み、さらにオールウェザーブランケットを体にぐるぐる巻いて山頂富士館のドアの凹んだ部分にしゃがみこんだ。 隣の人は下半身にサバイバルシートを巻きつけてみの虫のようになっているが、多分こっちのほうが暖かいだろう。

 しかしそのうちにガスはどんどん濃くなり星は消え、雨が降ってきた。 雨具はジャケットしか着ていなかったので慌ててパンツも出して履くのだが、真っ暗闇で不自然な姿勢で着ようとしたので足がつりそうになってしまった。 雨具を着てから再びオールウェザーブランケットをぐるぐる巻いて座り込んだのだが、このとき既に「ご来光は駄目だろうな」と諦めていた。 
 ここ(富士宮頂上)からだとご来光を拝むには三島岳か朝日岳(旧成就ヶ岳)に行くのがよいのだが、その気も起きず、手近な丘(後でわかったのだが駒ヶ岳)に登り、雲が薄くなった間から薄ぼんやりした赤いラインが見え、それが再び厚い雲に隠されると早々にご来光待ちは取りやめることにした。 雨が降っていると、立っているだけと言うのは耐え難い辛さになるのだ。

浅間大社


 ヘッドランプを使わなくても足元が見える程度の明るさになったところで剣ヶ峰に向かうことにする。天気も悪いし風もあるし行かなくてもいいのだが、やはり3776の最高地点に行かないと「登った」といえないような気がするし、次に行くことがあるかどうかもわからないので行ける時に行っておいたほうがいいと判断したのだ。
 
馬の背


 ガスで視界が無い中、ズルズルと滑り足場の悪い馬の背を進んでいく。 吐き気は大分治まっているのだが、なんとなく体が重く、時折吹く強い風にふらつきそうになる。 それでも当初予想していたよりも近い場所に剣ヶ峰はあった。 ひどい時は渋滞で記念撮影30分待ちということもあり二の足を踏んでいたのだが、ご来光に早々に見切りをつけて早めに移動を開始したおかげで10分とかからず順番が回ってきた。

順番待ち

剣ヶ峰

三角点

 前に撮影していた人に頼み撮って貰う。 横殴りの雨のせいでレンズに水滴がついてしまったが、状況が良くわかるのでまあいいだろう。 この後「真の最高地点」(赤ペンキが塗ってある岩)と三角点に触れて「最高点に登頂」を果たした。 お鉢めぐりはどうしようかと思ったが、体調はお世辞にもいいとはいえないし、何よりこの天気だと影富士もクソも無し、あと大渋滞の吉田口のあたりを通るのもちょっとカンベン、ということで取り止め。 御殿場口に移動し、郵便局で登頂証明だけ出してから下山することにした。

 ところでこのとき、K2に無酸素登頂した超一流のアルパインクライマー、戸高雅史氏とそ彼が主催する自然学校の子供たちと思しきグループに遭遇したのだが、声をかけられずに見送ってしまった。 この日にずらした理由のひとつが彼に会えるかも知れないというものだったのに何をやっているのか・・・。

火口
火口 なぜか外人はずさんな装備が多い

郵便局
郵便局 

郵便局で書いているうち雨はどんどんひどくなってきた。 「これはお鉢めぐりしないで正解かな」と思いつつ下山を開始した。 下山はプリンスルートで下ることも考えたが、風が強いときは宝永火口が危険という話も聞いたのでおとなしく富士宮ルートで下ることにした。もっともガイドプランの人たちはプリンスルートで降りたらしいのだが・・・。

下山1

 下りは後は空気が濃くなる分楽になるだけだろうと思ったのだが、雨と風が強いうえに単調な道ということもあって気が滅入ってしまった。 その上八合目あたりからしゃっくりが出始め、「ヒイック」「ヒイイック」と絶え間なく変な音をさせながら降りる羽目になってしまった。まったく登りではオナラ、下りではしゃっくりと散々である。 どうも自分は3000~3200mぐらいで変調の境目があるようだ。

 八合目から元祖七合目のあたりは粒の細かいスコリア帯なのだが、折からの雨で滑りやすくなっており、目の前で盛大にすっ転ぶ人がいたので慎重に下る。  時に手を付かなければならいような時は別だが、こういう時はやはりダブルストックは頼りになる。 そして唐突に思ったのが、「バカ尾根はいい練習になったなあ」と言うこと。 急峻で不規則な階段が延々と続くバカ尾根はこの富士宮ルートと本当に良く似ている。悪天候だと気が滅入るとこまで似なくてもいいのだけど。

 登っている時は太陽が出ていてもガスが強く下界がまったく見えなかったのだが、今日は荒れ模様なのになぜか下の方の視界が開けており、宝永山や箱根のほうが見えるので多少気が紛れるのが救いと言えば救いだった。
地図を出して山座同定するほどの気力も残っていないが、正面に見えるのは箱根だろうか、もうちょっと余裕があればいいのだが。


下山2
宝永山が見える

下山3
箱根?


 元祖七合目でウェアがかなり蒸れてきたのでユニクロのペナペナダウンを脱ぎ、七合目では防風フリースも脱いだ。雨と風があるとはいえ、ここまで降りてくると行動していると大分暑くなってくる。大してかかるまいと思っていたのだが、元祖七合目から新七合目までが思いのほか長く(小屋が見えてから妙に長く感じる)、「新七合目で防風フリースを脱ごう」と決めてからかなり歩いた為汗がびっしょりになってしまった。 新七合目から六合目も予想外に時間がかかってしまった。

 それでも集合時間(早く集合すれば帰りの温泉でゆっくり出来るので予定は12時だが11時半に集まって欲しいとの事だった。)より1時間40分早い9時50分に登山口に到着。 郵便局でちんたらしていなければ、お鉢を巡るかプリンスルートを降りても余裕だったと思うがこれはまあ仕方が無い。次回来ることがあればお鉢を巡ってもいいだろう。それより下山と同時に雲が晴れてきたのが微妙にむかつくのだが・・・。 下山と同時に晴れって鍋割山以来これで三連続じゃないか?

下山4
今頃晴れられても・・・。


 ところで、11時半にはツアーの全員は集まっていたのだが、肝心のバスが渋滞に捕まり12時過ぎまでやってこなかったのでここでのんびり朝飯の分の弁当を使ってしまうことにした。 明け方ずっと吐き気を感じてえづいていたので胃がなんかショボショボしており食欲が無いが、高い山荘のめしを食わずに腐らすのももったいないと言う貧乏性が勝った。 ご飯と梅干、コブの佃煮とウィンナ、これだけでも別に頼むと1000円するんだぜ?

 この後ツアーは日帰り温泉施設「天母(あんも)の湯」に立ち寄った。とにかく山小屋では風呂に入れないし、下山中も雨に蒸れていたので全身が風呂を求めていたこともあってこの風呂はとてつもなく爽快だった。ツアーは概ねそういうスケジュールだと思うが、やはり下山後はきっちり温泉で〆たいものである。

下山5
天母の湯 快適です
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コメント

非公開コメント

No title

お疲れ!
状況がよくつかめる面白い登山記だったよ。
次回は良い天気の時に登れるといいね。

No title

う~ん。
やっぱり晴れないことにはね。
9月には南アルプスを計画ちう
プロフィール

piccoli

Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

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