本社ヶ丸(1631m)~雪山で遭難しかけるの巻~

 14日の大雪の後「うおぉ~雪のあるうちに丹沢行きてぇ!」と鼻息を荒くしていたのだが、なんだかんだ言ってるうちに時機を逸してしまった。コーフンしてAmazonでスノーシューまでポチってしまったのにバカ丸出しである。

 で、雪が無くなったとなれば何度も登った丹沢の山ではなく新しい山にも登ってみたいもの。そんなわけでアルペンガイドをパラパラめくりながら検討して奥多摩の鷹ノ巣山、天目山(三つドッケ)、丹沢の檜洞丸あたりを考えてみたのだが、どれもかなり時間を要するコースの上に電車から本数の少ないバスを乗り継いでいかないといけないのがネックだった。 特にバス本数が少ない奥多摩の場合、早出早帰りが基本の山行では早い時間のバスに合わせようとするとそりゃもう早い時い間に家を飛び出していかないといけなく、それをしくじったら山行自体取りやめにしないといけないレベルなのだ。

 う~ん駅からバス乗り継ぎ無しで直登出来るとこどっかねえかな・・・と探していたら、地図の端っこのほうに個別案内が載っていない山が見つかった。 中央線笹子駅の南にある「本社ヶ丸」と言う山だ。

 ほんじゃがまる・・・・なんか面白そうな名前ではないか。 すぐ近くには人気のある三つ峠(御巣鷹山とか)があるためマイナーな扱いのようだが、山頂からの見た富士山~南アルプスはそりゃもうたまんねえ、と言う感じらしいのである。 大月市の観光協会で情報を収集したところによると、大体一緒に登られることの多い清八山に40cm近い雪が残っているとのことでちょっと不安ではあったが、ゴアテックスのシューズはあるし、昔と違って(安物とはいえ)スパッツは持ってるし、チェーンスパイクもあるからまあ大丈夫だろう、とココに決めた。 ただちょっとだけ不安だったので遭難救助保険だけには入っておいた。

そして朝。 雪が残っているのなら予想外に時間を取られる危険もあるので早起きしようと目覚ましを4:30にかけておいたのだが、目が覚めたのは5:20だった。このときは気付かなかったのだがどうやら午後4:30に設定していたらしい。 慌てて昨日のうちに作っておいたホットドッグを詰め込み家を飛び出したが、結局乗車候補の電車のうち一番遅い奴になってしまった。 これで早くも30分のロス。
 
 中央本線は昔ナツカシの対面座席で脇に寄りかかれるのですぐにウトウト。そうこうしているうちに笹子に着いた。駅からかったるい車道歩きと退屈な舗装林道を一時間近く歩いて第一の目印の変電所に到着したが、除雪されていたのはそこまででそこから先の未舗装林道は新鮮な雪がたっぷり残っていた。

林道
早くもスパイクの出番

 ココでスパッツとチェーンスパイクを装着するが、この時は初めての本格的スノーハイクにテンション上がりっぱなし。 ところどころに見える動物の足跡に心躍らせたり、「買ったスノーシュー持って来るべきだったかな」「これだけ眩しく反射してるとサングラスも必要かな」などとあれこれ考える余裕もあった。 
林道2
楽しい雪の林道歩き

 駅から1時間50分ほどで登山届を入れるポストに辿り着いたのだが、シーズンオフのせいか用紙は無く出しそびれてしまった。 で、ここで盛大なミスをする。 非常に判り易い案内板があったのだがそれを見落とし、ハッキリしたトレースのあるほうに進んでしまったのだ。雪が無ければミスることも無いのだろうが、たっぷり雪が積もっていると林業用作業道だろうと正しい道に見えてしまうのだ。 そのまま20分ほど進むとトレースが消えてしまいまっさらな雪面になってしまった。
どんづまり
ここでトレース消えた

 冷静に考えたら3日前に清八山に登った人がいるのだから間違いだと判りそうなものだが、まだ体力に余裕があったので「おお、ここから自力ラッセルしなきゃいけないのか」と余計にテンションが上がってしまい引き返すと言う選択肢が見当たらなかった。 木々が切れた場所を少し進んでいくとやや頼りなげな足跡があったのだが、それを辿って行くとどう考えても道じゃない森の中にありえない角度で登っていっていた。 今から考えると妙に細いというか小さい足跡だったのでなにかの獣のモノだったのかもしれない。

 一旦引き返してなんとなく道っぽい、斜面の土が崩れてむき出しになっているところ(登山道にありがちだよね)に進んだら、道どころか雪の最大級の吹き溜まりで太腿の上のほうまでもぐりこんでしまった。こりゃあかんと小さな足跡を見つける手前まで引き返し、別のルートを探すが、最初に止まったところから直進したところに別の足跡を見つけた。しかし一つはスノーシューかスキーのようなすり足のものでどう見ても見当違いのほうに進んでいるし、別の1つもいつしか煙のように消えてしまって登山道にあってしかるべき木と木のスペースが消滅してしまっている。ここでようやく「こりゃどうも完全に道を間違えて遭難一歩手前の状況に陥っているらしい」と事態を認識することが出来たので登山ポストのあった場所まで下降することに決めた。 
 
 登山ポストに戻ったら明々白々な案内板があり、なんでこんなところでミスったのか理解に苦しむのだが、遭難するようなミスとはこういうものなのだろう。 青梅署の山岳救助隊の副隊長氏の著書でも川苔山で橋丸ごと一個間違えて林業用作業道に入り込み遭難死した老人の話があったが、まさか自分がこんなミスをするとは思わなんだ。
 えらい時間をロスしたし体力も消耗したので尻尾を巻いて帰宅することも考えたのだが、交通費がもったいないと言う貧乏性と、まだ11時なので何とかギリギリ登頂できないことはないという希望的観測に基づき登山を再開。登山口から清八峠は順調に行けば1時間ちょっとでいけるというのが根拠だったが、トレースがあるとは言え登山道にはみっしり雪が付いているのは考えに入っていなかった。 おまけに北側の斜面の為気温が上がらず、水を飲もうと思ってもハイドレーションの開閉栓が凍結して詰まった為、水を飲むたびに立ち止まって栓を抜いたりと細かいロスがあり、なんとか清八峠に出た時には12:30近くになっていた。
清八峠
やっとこ清八峠

 往復で15分ほどとのことなのでダッシュで清八山に向かう。清八山山頂には12:35に到着するが、ここの眺望の素晴らしさは余計な労力を使い精神的にダメージを負っていた自分には刺激が強すぎた。

清八山
ヤッタネ

 ドォ~ンと富士山、南アルプス、中央アルプスが遮るもの無く聳え立っている。 特に南アルプスは丹沢よりも近いだけあってより明確に迫ってくる。 一つだけ雪の被りが少ないとんがりピラミッドの甲斐駒ケ岳はそのうち挑戦したいと思っていることもあって「さあ、来いよベネット。銃なんか捨ててかかって来い」と呼びかけて来るようですらあった。

甲斐駒
甲斐駒
白峰三山
白峰(しらね)三山 左から農鳥岳、間ノ岳、北岳
富士山
フッジサーン
 
 体の奥からぐつぐつと煮えたぎるものが押さえられず、ストックを置くと思わず
「ウオォオオオォオオオォオオ―――――!」
雄叫びを上げてしまった。周囲に人がいたら気が触れたと思われないかしら、とふと心配になって辺りを見回したが誰も来ないので一安心。 そういや今日は他の登山者と会っていない。
ここで飯にすることも考えたが山頂は狭く落ち着かないので写真を撮ったら早々に撤収。 まるで無酸素で8000m峰に登頂するヒマラヤニストのように慌しい。

清八山2
じがどり まだ笑う余裕がある
 
 次は最大目標の本社ヶ丸だ。清八峠から今にもそれっぽい、岩肌を剥き出しにしたピラミッドのようなピークが見えている。
コブ1
ここからだと山頂に見えるんだけどね・・・

 そういや山頂手前は岩場があると聞いていたので緊張。 どう見てもストックのままでは無理なのでザックにくくりつけ、風も出てきたし気温もそんなに上がらないのでここで買ったばかりのヤッケを着込む。 足だけではなく時には岩や木の根を掴み登っていく。 雪が被っていたり岩が露出していたりなので迂闊なところに足を乗せると滑ったり雪が崩れて足を踏み外すので緊張する。 県警のHPを見た限りここから滑落死した人はいないようではあるが・・・。
岩場1
岩場
岩場2
上からみるとこんな感じ

 やった頂上だ!と思いきや偽ピークだったようで何の標識もない。後で調べたらなんでも「造り岩」とか言う名前らしい。その後もう一つ偽ピークをこなし「いい加減にしろや!」と軽くキレかけたところで今日初めて他の登山者と擦れ違った。 そういや駅のトイレでカメラと三脚背負った人がいたがあの人だったか。 どうやら自分とは違い鶴ヶ鳥屋山側から入ったようだ。 話を聞くと稜線上は風でトレースが完全にかき消され、自力ラッセルでココまで来たようだ。自分の方が1時間もロスがあったとは言え自力ラッセル+長距離で時間がかかった人にこんなところで会うとは・・・。 二度目である程度道がわかっているだろうとは言えトレースなしの道を迷わず来れてしまうのだから実力がある人は羨ましい。 急いでいたので名前も聞かずに別れてしまったが惜しい事をした。 
しかしこの急峻な岩場を腰を落とすでもなく、後ろ向きで岩を掴むでもなくスタスタ降りてしまうのだから恐れ入った。 自分は昔からこういう急峻な下りだと(本当は余計に危険だから良くないのだが)すぐ腰を落として尻餅をついたような降り方になってしまうので・・・。
 
岩場3
最後の岩場

 さて、最後の岩登りをこなすといよいよ本物の本社ヶ丸の山頂だ。 清八山と本社ヶ丸の二峰で「秀麗富岳十二景」の二つを占めているだけあって流石に美しい。

本社ヶ丸

富士山2

 ただ、時計を見るともう1:30を回っている。 ココでのんびりカップ麺などを作っていたら時間も食うし、下手をしたら陽のあるうちに降りられないかもしれない・・・という恐怖が現実化してきたこともあり、ここでは写真を撮った後オニギリを一個頬張っただけで早々に撤収することに決めた。ちなみにこの決断はポカ連発の今日の山行で数少ない好判断だったがこの時点ではまだ気付かない。
 と、その前に野帖にタイムを書き込もうと思ったのだが、ペンを紛失していることに気がついた。おまけにザックのポケットのジッパーが全開になっており、ファーストエイドキットを入れた蓋付きボトルまでなくなっている。何処で紛失したにしろ、見つけるのも取りに戻るのも絶望的なため諦めるしかなかった。 とにかく今回の山行はポカばかりやっている。

(下山編は続きを読むをクリック!)
 
 
 
本社ヶ丸からの下りは確かに先ほどの青年の足跡しかないのだが、所々雪が飛ばされて無くなっている所があり、そういうところに来るとすぐ「どっちに進んだらよかんべ?」と迷ってしまう。

トレース
頼りになる青年のトレース

 あと、トレースがあるにはあるのだが、北風で南側に吹き寄せられて雪庇のようになっているところがあり、うっかり足を乗せたらボロッと崩れて斜面を転げ落ちそうにも感じられる。そういうところは敢えてトレースを外さないといけないので結構つらかった。 とりあえず安全そうなところまで降りると、少し気持ちに余裕が出てきて動物の足跡なんかに目を移す余裕も出てきた。 

眩しい
うおっ眩しっ

動物の足跡
動物の足跡
 
 ところで登りだと丁寧に足跡をなぞったほうが楽だが、緩やかな下りだと乱暴にすり足で降りちゃったほうが楽なので汚らしい踏み跡になっていく。 こうして何度か通っていくうちに判り易いルートになっていくのだろう。ただ、途中きれいな雪面の誘惑に耐えられず、トレースを外れてズボズボと新しい足跡をつけてしまった。 道迷いの原因になりかねないからこういうのは良くないと思うのだが・・・。
トレース2
自分の足跡


 青年のトレースを頼りにガンガン進んでいくが、下山コースの一つに考えていた角研山がいつまで経っても現れないので不安になるが、途中で分岐の目印であるでっかい鉄塔が現れたので一安心。 普段山の中でこんなごっつい建造物があるとげんなりするものだが、序盤に道迷いをやらかしている不案内な山、しかもタイムリミットが刻々と迫っている上に時間のかかる雪道、しかも疲労が溜まってきて弱気になっているので間違っていないことが確認できて一安心だった。 時間に余裕があればなだらかな平地であるしここでゆっくり雪見しながらおやつのオシルコでも食べたいものだが・・・。

鉄塔
鉄塔 新道分岐の目印でもある

熊?
おいちょっと待てなんだこの足跡は
 
 分岐の表示とトレースを頼りにひたすら東へ歩を進める。角研山の山頂に着いたのは15:18。日没の時間を考えたらかなりやばい時間であるし、眺望の利かない地味な山頂で長居することもないのでさっさと通過・・・は良いのだがココで少し迷った。

角研山分岐
角研山分岐

 角研山から直に下山するルートと、ヤグラ分岐まで進んでそこから下山する下山するルートがあり、どちらにするか決めていなかったのだ。 さっさと降りることを考えたらここから降下したほうが早いのだろうが、地図を見ると急斜面だのなんだのと書いているし、ここは判り易い道の方が良いのではないかとヤグラ分岐まで進むことに決めた。 大したことは無い距離だと思っていたのだが、すでに日はかなり傾いてきて不安は倍増。 途中何故か急斜面に直降下した踏み跡があり、思わずそっちの誘惑も駆られたが、どう見ても間違っているのでスルー。 この足跡の人は無事だったのか未だに心配である。 


 「一体いつヤグラは出てくるんだ!」「角研山から降りた方がよかったのかも・・・」と不安になってきた辺りで腐食した林業用ロープウェーの残骸が現れた。なるほど、この骨組みが「ヤグラ」か。 しかしここがすぐ分岐になっているわけではなくもう少し先に分岐があり、これまで以上にハッキリしたトレースの登山道があったので安心して下りに入った。

ヤグラ
ヤグラ

 トレースがハッキリしているとはいえ局部的に雪がのっさり溜まっているところがあったり滑りやすくなっているところがある。疲労で足運びが雑になっていることもあり1回転倒してしまった。 このころになると感動も何も無く事務的に、惰性で足を動かしているだけの状態だった。
 
 4時ちょっとすぎに舗装された林道を横切るところに出た。 ココでまずは一安心だがかなり暗くなってきたのでヘッ電を取り出しておく。 今まで使う事も無かったがついに出番が来てしまった。 出来たら点灯する前に駅に帰り着きたいのだが・・・・。
 
 林道を横切ってからも下りはかなり残っており、やっと降り切ったと思ったら沢に出てきた。 地図には「渡渉あり」と書かれていたが、あっちの岸に渡り、こっちの岸に戻りと二度三度渡らねばいけなく、しかも雪がなくなっていると何処が渡渉場所で反対の岸に出ればいいか判らなくなってしまい、暗くなってきたこともあって危うくまた道に迷いかけた。 整備された登山道だと普段「いらねーよこんなにベタベタ鬱陶しいなあ」と感じるピンク色の目印テープもココで視認できると「よかった!間違ってなかった!と」感じてしまう始末。

渡渉
美しいんだけどもう浸る心の余裕が無かった。


 この時間帯までに降りないとヤバイと決めていた5時を回り(ちなみに夜8時までに連絡が無かったら遭難だと思って警察に言えと親に言ってある)、砂防ダムのような堰堤を越えて林道終点(登山道入り口)に辿り着く直前についにヘッ電に点灯。舗装された林道ではもう心配する事もないのだが、万一のために点灯したまま下り続けた。

 そのまま林道を下ると建設会社の作業車両や作業員宿舎らしきプレハブの建物が現れ、「無事に帰ってきた」ことを実感させてくれる。 その道を通っているとずんぐりしたオバサンが現れたので駅までの道を尋ねると一瞬びっくりしたような顔のあと、すぐさま心配そうな表情になった。 やつれた面にヘッドランプ、ダブルストックの男は登山者の格好とは言え、遭難寸前の異様な雰囲気を漂わせていたのだろう。声も弱弱しかったし・・・。
僅か200mかそこらの距離で駅の明かりは見えているのだが、「気をつけてね」と励まされてしまった。

気をつけようにも既に一回遭難しかけているのだよね、と思いつつ、疲れた足取りで笹子駅に到着。 時間があったら笹子餅と笹一酒造の酒でも買って行きたかったのだが電車の時間も心配だし、諦めざるを得なかった。寝坊と道迷いのロスさえ無ければなあ・・・。

笹子

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コメント

非公開コメント

No title

だめだよ、ちゃんと僕の酒を買って帰るよう余裕をもっていかなきゃ!v-12

No title

すまんのす<(_ _)>

あの道迷いが無ければ4:30に降りられてたはずなんだけどね.

プロフィール

piccoli

Author:piccoli
 自転車、釣り、スノーケリングにハイキングとアウトドア遊びばっかしてる不良中年です。 主な出没地域は三浦湘南、真鶴に奥多摩周辺。 

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